【自動運転のタクシー】はいつ乗れる?~実用化の目途

【自動運転のタクシー】はいつ乗れる?~実用化の目途

毎日のニュースで必ずと言っていいほど耳にするAI(人工知能)の話題。今回は、皆さんの日常生活にも直接影響を及ぼす自動運転の話題です。その中でもまず最初に巷に現れる可能性が高い、「自動運転タクシー」が実現する時期などについて、いろいろな情報を総合しつつ、ご紹介したいと思います。

自動運転タクシーが都内で初走行!

東京などの都市では欠かせない人々の足であるタクシー。自動運転技術投入の見通しはどうなっているのでしょうか。

大きなターニングポイントになるのは、間近に迫った「東京オリンピック」です。

2018年8月から9月にかけて、世界で初めて乗客を乗せた「自動運転タクシー」の実証実験が東京都内で行われました。これは実用化を推進する東京都の資金援助によって実現したもの。トヨタのミニバン「エスティマ」の車両をベースに、タクシー大手の「日の丸交通」と技術会社の「株式会社ZMP」が共同開発したものです。

実証実験に使われた自動運転タクシー 出典:ZMPのプレスリリース

緊急時に備えて運転席と助手席に係員が乗車しましたが、スマホのアプリでタクシーを呼んだ客を、スムーズな運転で目的地に運んだということです。“運転手はいないこと”になっているせいか、支払いはクレジットカードで行われたそうです。

9月5日には、小池都知事も試乗。大手町から六本木までの約5.3キロ。自動運転タクシーの乗り心地について、「最初は心配だったが、(中略)大変安全な運転でした。東京2020大会や、高齢者のお出かけに利用できるなど、重要な社会基盤の一つに育っていくと良い」と述べました。

この結果を知ると、「東京五輪には普通に自動運転タクシーに乗れるかも」と期待したくなります。しかし、すべてにお膳立てがあった実証実験を受けて、実現できほど甘くはないようです。

自動運転レベルの意味は?

自動運転技術の開発事情を大まかに知るのに役に立つのが、「自動運転レベル」というスケールです。つまり、システムがどの程度、運転をコントロールするのかという度合いを示したものです。

  • レベル①・・・システムが速度かハンドルの制御を担う
  • レベル②・・・システムが速度とハンドルの両方を担う
  • レベル③・・・緊急時を除いて運転をシステムが担う
  • レベル④・・・限定エリア内で運転手が不要になる
  • レベル⑤・・・常時運転手が不要になる(完全な自動運転)

冒頭の実証実験をこのスケールに当てはめると、レベル③ということになります。どれほど「緊急時」があったのか不明ですが、もし係員が一度もハンドルに触らなったとしたら、もっとニュースになってもいいと思いますが。

ところで実証実験で使われた車種はトヨタですが、システムは別の技術会社のものという実験車でした。一般のタクシーということならば、自動車メーカー各社の開発状況が気になるところです。各メーカーの開発はどこまで進み、どういった目標を掲げているのでしょうか。

日本の自動車メーカの開発状況は?

主な日本のメーカーは、「2020年」にレベル③の車を供給できるかどうかが焦点。

<トヨタ> レベル④を2023年目途に達成

「東京オリンピックで、レベル④の自動運転車を披露する」と表明しているトヨタですが、それはコンセプトカーという形になるのではないでしょうか。実際にレベル④の自動運転車を売り出せるのは2023年ごろになると報道されています。

トヨタは2016年に西海岸のシリコンバレーに自動運転の開発拠点、TRI(トヨタ・リサーチ・インスティチュート)を設立しました。アメリカの工学系の有名大学と連携して、自動運転技術の開発に取り組んでいます。本場アメリカをしっかり取り込むところが、王者トヨタの面目躍如といったところです。

<ホンダ> レベル④の技術確立が2025年ごろか

各社に先立って、2017年にレベル④の技術について明言しているホンダ。その確立は「2025年ごろ」というもの。

2018年10月に一時、アルファベット社(グーグルの親会社)の傘下の「ウェイモ」と提携するかと思われましたが、結局破談。代わりにGM(ジェネラル・モーターズ)の自動運転車部門に出資を決めました。

他社との連携で、開発のスピードアップを図っているようです。レベル④の技術の確立は、2025年より早まる可能性もありますね。

<日産> 今秋、高速道路での手放し運転が可能になるスカイライン

2016年にレベル②にあたるシステムを「セレナ」に搭載している日産。その名を「プロパイロット」と名付け、その後、「エクストレイル」や「リーフ」にも搭載しています。

5月22日から開幕した自動車技術会が主催の自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展 2019年」において、日産は「プロパイロット2.0」を発表しました。高速道路において、同一車線内での手放しが可能になる技術だということです。もちろんドライバーの常に対応できる範囲という条件があります。また、車線変更のタイミングをドライバーに提案できるようです。

このシステムは、今秋発売される新型スカイラインに搭載される予定。さらにレベル③のシステムは、早ければ2020年を目指しているとも伝えられています。

注目される海外メーカーの技術

ここまで主な日本のメーカーの開発状況を見てみましたが、一方、海外のメーカーの開発はどうなっているのでしょうか。

海外の自動車メーカーでは、テスラが先行し、ベンツが追随しているようです。

  • BMW・・・2012年までに高速道路でのレベル②。2025年にレベル④の達成を目標。
  • ベンツ・・・高速道路と駐車場でのレベル③を2020年までに。レベル④は2023年に達成を目指す。
  • アウディ・・・2021年に限定領域で事業者向けにレベル④の車両提供を開始したいとの意向。2025年には一般向けにもレベル④の車両を提供することを目指す。
  • フォード・・・レベル④を2021年に事業者、2024年に一般への供給を目指している。
  • テスラ・・・完全自動運転車(レベル④)の供給を2020年以降に供給すると見られるが、2018年の死亡事故を受けて開発が遅れる可能性も。

こうして世界を俯瞰してみると、自動車メーカーは総じてレベル④を当面の目標として、日進月歩で開発を進めている感があります。

世界初の自動運転によるタクシー運行

世界の自動車メーカーが、自動運転の技術の開発に躍起になっているなか、それをしり目に、ある大手IT企業傘下の会社が自動運転タクシーの営業が2018年12月に始めました。場所はアメリカ南西部、アリゾナ州フェニックス周辺、160キロにわたる地域。

システムを開発したのは、ホンダと一時は提携しようとしていた「ウェイモ」です。(ホンダと提携のうわさがあった会社)2016年からこの地域でグーグルの開発事業の一環として実証実験が行っていました。

やはりまだ無人とはいかないようで、緊急対応に備えて運転席に係員が乗っています。また、現在のところ利用者は登録制になっており、スマホのアプリで車を呼ぶシステム。取材のため乗車した記者によると、その運転はスムーズにいかないところもあったようです。

アメリカのIT系の配車サービス企業には、「ウーバー」や「リフト」などがありますが、いまだ自動運転は実験段階で、実際の営業での使用には至っていません。ただ、ウェイモによる営業開始は、ライバル会社の開発を加速させるでことでしょう。

東京五輪で自動運転の実用化へ加速

日本、そして海外の自動運転技術は着実に進歩しています。そして、それが“実践投入”されるのは、まずタクシーや運送業など業務用ということになると考えられます。

アメリカでもタクシーから自動運転?

一方で実現には多くの課題があります。それは、道路運送車両法における規定や事故が起きた際の責任の所在などです。監督官庁や業界団体がルールや法の整備を進めているようですが、技術開発のスピードに付いていけない状況です。

ただ、オリンピックという世界中の注目が集まる絶好の機会に、日本の技術力をアピールすることは国としても大変重要です。前回の1964年大会では、戦後からの復興の姿を世界にうまくアピールし、国際社会での存在感を高めることにつながりました。

そういったマクロ事情を考慮に入れると、以下のようなイメージでの自動運転タクシーの実現が想像できるのではないでしょうか。

  • 既に都が支援しているトヨタが車両を供給
  • 営業を都内のオリンピック会場を含む地域に限定
  • 緊急時に備え、係員が常に乗車
  • 車両が利用するコースを限定し、インフラを整備
  • 利用者はあらかじめ登録し、乗車前に目的地を指定

これに加え、オリンピックに参加するアスリートや関係者の送迎の際にも、バスなどを含む自動運転車が提供され、ニュースとして世界に発信されるのではないでしょうか。

どちらにしても、一般の私たちが気軽に利用できる自動運転タクシーは、オリンピックを契機に現実味を実感することになるでしょう。■