映画【タイタニック】の主人公は実在したのか?~実話と制作秘話を教えます

映画【タイタニック】の主人公は実在したのか?~実話と制作秘話を教えます

映画「タイタニック」は、日本における洋画の興行収入第1位で、その額は282億円(2021年1月現在)です。世界の興行収入では、「アベンジャー/エンドゲーム」(2019)、「アバター」(2009)に続く、堂々の3位。その額は、驚愕の約24億7,000万ドル。日本円にして約2,570億円にも上ります。

1970~80年代に、大災害を描く「パニック映画」がブームになりましたが、「タイタニック」は、それにシェークスピアの「ロミオとジュリエット」を思わせる恋愛ドラマをうまく取り入れた、

一粒で二度おいしい傑作”です。

映画の土台になる1912年に起きたタイタニック号の沈没事故は、まぎれもない事実です。が、一方で気になるのが、

「主人公は、実在の人物なのか?」ということです。

そこで今回は、映画の登場人物の真相をご紹介したいと思います。さらに、キャメロン監督がどうしてこの「古びた旅客船事故」を映画にしようと決断したのか、そして舞台裏にはどんな秘話が隠されているのか

映画「タイタニック」の知らざれる真実。

これを読めば、再びこの映画を見るときに興味が2倍になること請け合いです。まず、ストーリーを忘れてしまった人のために、映画「タイタニック」のあらすじに触れておきます。

不沈クルーズ船タイタニックは1912年、ニューヨークへの処女航海で氷山と接触して沈没してしまう。船で出会った下級層の青年ジャックと富裕層の娘ローズは、永遠の愛を誓いながら事故によって離れ離れとなる。

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「タイタニック」の登場人物は実在したのか?

主人公のジャックとローズは実在の人物?

まず気になるのは主人公の二人、ジャックとローズが実在の人物なのかどうか。しかし残念ながら、二人とも

実在の人物ではありません。

しかし、まったく架空というわけではなく、キャメロン監督が部分的にモデルにした実在の人物がいるようです。

ジャック・ドーソン(レオナルド・デカプリオ)

実はタイタニック号の乗船名簿には、J・ドーソンという名がありました。しかし、「J」というのはジャックの略ではなく、ジョセフでした。彼は乗客ではなく乗務員。タイタニック号の燃料となっていた石炭を担当していたようです。

ドーソンという名前は、スミスなどのように頻繁に聞く名前ではありません。もしかして、キャメロン監督が参考にしたかも、と思われるかもしれませんが、残念ながらその可能性は絶対ないようです。なぜなら、キャメロン監督は脚本を完成させてから、彼の存在を知ったからです。

しかし、別にキャメロン監督がモデルにしたのではないかという人物がいます。それは、

ジャック・ロンドンです。

(Wikipediaより)

彼は当時、有名だったアメリカの作家です。しかし、タイタニック号に乗船していたわけではありませんが、映画で登場したジャックのように自由気ままに放浪の旅をしていたようです。そして、彼が住んでいたアラスカの町の名は「ドーソン」というのだそうです。

ローズ・デウィット・ブケイター(ケイト・ウィンスレット)

ローズは富裕層の令嬢として登場するので、もしかしたらモデルがいるのかと思いがちですが、こちらも実在しない架空の人物です。

しかし、彼女についてもキャメロン監督が参考する人物はいました。それは、

ベアトリス・ウッドです。

(Wikipediaより)

彼女はアメリカの裕福な家庭に育ち、芸術家となって「ダダイズムの母」と呼ばれていました。当時の現代芸術の先駆者だったようです。

ただタイタニック号に乗船していたわけではありません。キャメロン監督は、映画の企画を開発しているときに、彼女の伝記を読んでローズについてのインスピレーションを得ていたようです。ちなみに彼女は、

105歳まで生きました。

実在だらけの脇役たち

架空の人物だったジャックとローズ。しかし、主要な脇役は軒並み実在の人物がぞろぞろ登場します。印象的な人たちを紹介しましょう。

エドワード・スミス船長(バーナード・ヒル)

(Wikipediaより)

エドワード・ジョン・スミス船長は、船が沈み始めると救命ボートに乗ることを勧められましたが、それを断って救助の指示を続けたようです。また、船内の浸水防止のドアの速やかな密閉を命令し、沈没するまでの時間を少しでも長引かせました。

最後、スミス船長は映画で描かれた通り船と共に海に沈んだとみられています。船が沈む直前に海に飛び込んだ銀行員が、スミス船長が艦橋にいたところを目撃しています。

また最後に船を離れた少年が、スミス船長が頭に銃口を当てた後、その場に倒れたところを見たと証言しました。他の数人の証言者も彼が自殺したと述べましたが、遺体は見つからず真相は分かりません

マーガレット・“モリー”・ブラウン(キャシー・ベイツ)

(Wikipediaより)

富裕層たちのディナーの招かれたジャックは、その貧しい出自のために嘲笑をあびます。それをかばったのが、名女優キャシー・ベイツが演じたマーガレット・ブラウンです。

彼女は裕福な家の出身ではありませんでしたが、結婚した夫が携わった鉱山で金や銀が発掘されたため、富裕層の仲間入りをしました。

タイタニック号が沈没するとき、ブラウンは積極的に救助に参加。救命ボートに自身が乗ったあとも、まだ空きがあることを知って、引き返して海に浮かぶ生存者を乗せるように求めたそうです。

その後、彼女は「生存者委員会」を設立して自ら委員長となり、犠牲者の埋葬を支援しました。しかし、事故の原因究明の公聴会で証言することがかなわず、大変後悔したといいます。

ウォレス・ハートリー(ジョナサン・エヴァンス=ジョーンズ)

(Wikipediaより)

沈みゆく船の甲板で演奏し続ける船の楽団。そのリーダーが、ウォレス・ハートリーです。

彼には婚約者がいて、タイタニック号での仕事に躊躇していたといいます。しかし、彼女から送られたバイオリンと共に乗船することになりました。

彼のバンドは沈みゆく船に人々が動転しないように、ラグタイムやクラシックの曲の演奏を続けたました。それは船が沈むまで続いていたと、複数の生存者によって伝えられています。

彼の遺体は約3週間後に発見され、故郷の町に運ばれました。彼の葬儀には1000人が参列し、沿道では3万以上の人々が彼を見送ったといいます。

ちなみに映画で彼を演じるジョナサン・エヴァンス=ジョーンズもプロのバイオリニストです。

「タイタニック」映画化のきっかけは?

そもそもキャメロン監督は、どうしてタイタニックの映画化を決断したのか。その過程として外せないポイントは少なくとも3つあるといいます。それを一つずつご紹介します。

①深海探索が大好き

まず映画「タイタニック」の源は、キャメロン監督のダイビング、そして深海探索への強い興味です。それを如実に表しているのが、

1989年公開されたSF映画「アビス」です。

この映画は、深海に沈んだ原子力潜水艦を捜索する海底探索調査チームの話です。原作はキャメロン監督が高校時代に書いた小説でした。

上映時間は2時間20分という長いもの。さらに2時間50分の完全版が存在するぐらいですから、キャメロン監督のこの映画に寄せる思いの強さが分かります。」

②タイタニックの残骸

そういうキャメロン監督に火をつけたのが、約80年も海に沈んだままのタイタニック号の残骸を特定したニュースでした。

この探索プロジェクトの携わっていたのが、「アビス」の製作で組んだスタッフだったことも、キャメロン監督を映画化に促した要因でしょう。

そしてキャメロン監督は、タイタニック号の歴史的事故を映像化するために、脚本執筆に向けてリサーチを開始。その過程で、大いに影響を与えたのが、1955年のベストセラーを映画化した、

映画「SOSタイタニック/忘れえぬ夜(A Night to Remember)」です

映画「SOSタイタニック/忘れえぬ夜を見たい人はこちらをクリック

さらに文献では「Titanic: An illustrated History」が大いに参考になったようです。この本には当時の情報のほか、多くの図版やイラストが掲載されており、映像化への助けになったと思われます。

③IMAXのドキュメンタリー

そして決定的なダメ押しになったのが、IMAXのドキュメンタリー「Titanica」だったそうです。

キャメロン監督が映画化を構想していたとき、このドキュメンタリーの試写会の案内が届きました。これは①で登場した探索探査の映像を3D作品としてまとめたものです。その迫力に圧倒されたキャメロン監督は、映画化への決意を固めたようです。

キャメロン監督が、この映画のアイディアを20世紀フォックスの幹部に提案すると、すぐによい感触を得られたそうです。しかし、1億ドル(約100億円)を超える予算には難色を示されました。そこでキャメロン監督は、契約を成立させるために169ページという分厚い企画書を書きました。

驚きの「タイタニック」撮影秘話

タイタニック号(Wikipediaより)

全長約270メートルの巨大客船の沈没事故。それを映像化するために、CGはもちろん実際に船の各部がセットで再現されました。そして、大量の水を使った撮影も大変なものだったようです。いつか撮影秘話を挙げてみました。

深海のタイタニック撮影

映画の中の冒頭で登場する海底に沈んでいるタイタニック号。残骸となっているその姿はすべて本物です。

キャメロン監督は1995年、ロシアの潜水艇を使って12500フィート(約3800メートル)の海底に沈んだタイタニック号を撮影しました。使われたカメラは、なんと6000ポンド(約2.7トン)の水圧に耐えるように作られていたそうです。

しかし、1回で撮影できるフィルムの長さは通常と同じ。そのため一回の潜水でたった12分しか撮影できませんでした。

この海底撮影だけで、経費はおよそ3億円かかったそうです。

デカプリオは演技で苦悩していた?

レオナルド・デカプリオは、撮影が始まった1995年当時、すでにアメリカの芸能界で人気を博していました。また、俳優としての才能も認められ、発達障害のある少年を演じた「ギルバート・グレイプ」(1993)では、アカデミー賞の助演男優賞にノミネートされています。

キャメロン監督は、デカプリオに脚本に沿ったジャック役を演じるように求めました。当然です。しかし、デカプリオはそれに満足でませんでした。

この時、彼には抑えきれない向上心が芽生えていたようです。

当時のインタビューでデカプリオは、「スターになるなんてどうでもいい。誰だってメイクをしてミュージックがあればスターになれる。僕は俳優になることを考えているんだ」と答えています。

彼はそれまで、ジャック・ドーソンのような、自由奔放ではつらつとした役を演じたことはありませんでした。デカプリオは撮影が終わったあとでも、キャメロン監督に「もっとジャックに暗い部分を加えたらどうですか」と聞いてきたそうです。

「それは無理だ」。

その結果、デカプリオは演技の幅を広げることができたのです。

前代未聞のセット撮影

タイタニック号は当時の最大級の客船です。その映像化ということなれば、その多くはCGで処理することが考えられるでしょう。しかし、キャメロン監督は、CGに加えて巨大な船のセットを作り上げました

そのコストは、1億5000万ドル。製作経費の4分の3に及びました。

20世紀フォックス社は撮影に先立ち、複数のスタジオや巨大なタンクを備えた施設を探しました。しかし、結局、

新たな施設を建設することになりました。

場所はメキシコのカリフォルニア半島の沿岸。購入された40エーカー(東京ドームの約3.5個分)の広い敷地に4つの撮影スタジオが建設され、その一つには深さ30フィート(約9メートル)の水槽タンクが建造されました。

撮影スタジオ内に作られたタイタニック号は片側だけでしたが、実物よりわずか10%小さい巨大なセットでした。巨大なポンプシステムで船体が6%傾くようになっています。また、小さい甲板はなんと90度も傾き、沈没の最後の場面で登場しました。

細部にもこだわるキャメロン監督

ジャック・ドーソンの設定は、ギャンブル好きで画家志望の若者。映画の中では、ローズのヌードデッサンを描くシーンが印象的です。

ところが、ジャックを演じたデカプリオは絵はうまくありませんでした。こういう場合、プロの絵描きを雇って手の部分だけ撮影することが普通です。しかし、この映画では、

キャメロン監督がローズの絵を描きました。

しかし、デカプリオは右利きでキャメロン監督は左利き。そこで、撮影後、映像を反転させて使用しています。

キャメロン監督の細かいこだわりは、見えないところにも行き届いています。

タイタニック号は、2時間40分かけて沈みました。そこで、キャメロン監督は、映画の中でも船が沈むまでをその時間で話を進めたのです。観客に同じ時間を追体験させたかったのでしょう。テレビ映画の「24(トゥエンティ・フォー)」の手法を先取りしていたわけです。

救助された乗客たち(Wikipediaより)

さらにもうひとつ。キャメロン監督は、船の乗客に扮する150人のエキストラすべてにそれぞれの物語を用意していたそうです。彼ら一人ひとりに会って、役柄の名前と共にそれぞれのストーリーを話して聞かせたそうです。

製作自体が沈みかけた?

妥協を許さないキャメロン監督の撮影スタイル。おのずとスケジュールは遅れていきました。ハリウッド映画の人件費は比較的高く、予算オーバーも半端ではありません。

またハリウッドの映画会社は予算管理に関して非常に厳しく、20世紀フォックス社も、「タイタニック」の製作状況に気をもんでいました。

このままでは、製作が破綻する

自己資金での超過分をすべて賄うことが難しいと考えた同社は、提携する会社を探します。そして、最終的に手を組んだのがハリウッドメジャーのひとつ、パラマウント映画社でした。

パラマウント社は、追加の6500万ドル(約67億円)を出資し、北米の収益権利を取得。代わりに20世紀フォックス社は、それ以外、つまり全世界の収益権利を得ました。

さらに、予算の積み上げに協力したものがいました。それはキャメロン監督自身です。自分のギャラであった800万ドル(約8.3億円)を謙譲しました。その結果、映画の出来高払いになり、ギャラを受け取るまでに3年を要したようです。

公開20周年でリニューアルされた!

公開されてから20年がたった2017年。それを記念して「タイタニック」が再び全世界で公開された。

映画の音響は最新の技術を使った立体音響のリマスター版。音に合わせて座席が振動する効果も加わった。また、映像も3D版が製作されました。

一方、20年経ってもキャメロン監督のタイタニックへの思いは変わりません。“世界最高峰のドキュメンタリーチャンネル”と言われるナショナルジオグラフィックと共同で、タイタニック号沈没の謎を改めて検証

「ジェームズ・キャメロンと探るタイタニックの謎」

最新の探査データと共に、「なぜタイタニック号は沈んだのか」という問いに、改めて向き合っています。■

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