朝ドラ【ちむどんどん】なぜ面白くないのか~名作「ちゅらさん」との比較

朝ドラ【ちむどんどん】なぜ面白くないのか~名作「ちゅらさん」との比較

2022年度の前期、NHK連続テレビ小説「ちむどんどん」。沖縄復帰50年を記念した沖縄の家族めぐるドラマです。しかし、期待を裏切る出来の悪さに、連日SNS上で厳しい批判やツッコミが書き込まれています。(以下、連続テレビ小説=朝ドラ)

なぜか面白くない。つまらない。

元来、朝ドラは時々、そう言われたりしますが、今回の朝ドラは、それ以上に「イライラする」とか「ドン引き」など、嫌悪ともいえる反応が視聴者に見られます。

それはいったいなぜなのか。

そこで今回は、「ちむどんどん」が前代未聞の不評を買っている根本的な原因を解き明かしていこうと思います。

連続テレビ小説 ちむどんどん Part1 (1) (NHKドラマ・ガイド)

「ちむどんどん」は、本当に面白くないのか。

まず事実確認です。「ちむどんどん」は、実際、多くの人が面白くないと思っているのか。手っ取り早く調べる方法は、

視聴率です。

さっそく過去の朝ドラ作品と「ちむどんどん」(6月22日放送分まで)の平均視聴率を比べてみましょう。もちろん大昔の作品との比較は意味がないので、過去10年間の作品に絞りました。

放送年タイトル視聴率(%)主演
2012年度・前期梅ちゃん先生24.9堀北真希
2012年度・後期純と愛17.1夏菜
2013年度・前期あまちゃん20.6能年玲奈
2013年度・後期ごちそうさん22.3
2014年度・前期花子とアン22.6吉高由里子
2014年度・後期マッサン21.1玉山鉄二ほか
2015年度・前期まれ19.4土屋太鳳 
2015年度・後期あさが来た23.5波瑠
2016年度・前期とと姉ちゃん22.8高畑充希
2016年度・後期べっぴんさん20.3芳根京子
2017年度・前期ひよっこ20.4有村架純
2017年度・後期わろてんか20.1葵わかな
2018年度・前期半分、青い。21.1永野芽郁
2018年度・後期まんぷく21.4安藤サクラ
2019年度・前期なつぞら21.0広瀬すず
2019年度・後期スカーレット19.4戸田恵梨香
2020年度・前期エール20.1窪田正孝ほか
2020年度・後期おちょやん17.4杉咲花
2021年度・前期おかえりモネ17.4清原果耶
2021年度・後期カムカムエヴリバディ17.1深津絵里ほか
2022年度・前期ちむどんどん15.7黒島結菜
過去10年の朝ドラ視聴率 (*6月22日の放送分まで)

こうして並べてみると、「ちむどんどん」の数字の低さがダントツです。もちろん最近、NHKの番組がネット(nhk+)で見られたようになったこともあるでしょう。しかし、このサービスが始まった2020年前期以降の「エール」~「カムカムエヴリバディ」と比べても格段に悪くなっています。

面白くない原因は何なのか。

それを分かりやすく解き明かすために、「ちむどんどん」と似たような設定やストーリーにも関わらず、非常に評判が良かった過去の朝ドラと比較してみることにしました。それが、

2001年放送の「ちゅらさん」です。

このドラマは、初回放送時こそ平均視聴率22.2%でしたが、非常に好評を博し、その後も特別編が3回に渡り制作された朝ドラの名作です。

ちゅらさん―連続テレビ小説 (NHKドラマ・ガイド) 

このドラマは、見れば見る程「ちむどんどん」と類似しています。簡単にあらすじを紹介すると、次の通りになります。

八重山諸島小浜島で育ったヒロイン、古波蔵恵里(国仲涼子)が那覇へ移り住み、やがて上京して看護師を目ざす。沖縄の“おばぁ”やあったかい家族、東京で一緒に暮らす「一風館」の住人たちに見守られ、成長する姿を描いていく。(出典:NHKのサイトより)

また時代設定が微妙に被っています。主人公の恵理が生まれたのは、沖縄が日本に復帰した1972年。「ちむどんどん」では、主人公の暢子が高校を卒業して上京した年です。つまり、「ちむどんどん」の方が18年ほど先行しています。

キャラクターで比較する

朝ドラの場合、ストーリーはもちろん、キャラクターの魅力がドラマの面白さを大きく左右します。なぜなら、半年間、週5日、登場人物を見守り続ける視聴者にとって、家族のような存在にならなくてはいけないからです。そのために必要なのが、

「共感」そして「感情移入」です。

まず2作品の登場人物を比較しやすいように、対照表を作ってみました。

「ちむどんどん」「ちゅらさん」役柄
比嘉暢子古波蔵恵理主人公
比嘉優子古波蔵勝子母親
比嘉賢三古波蔵恵文父親
比嘉賢秀古波蔵恵尚
比嘉良子
比嘉歌子
古波蔵恵達兄弟
大城房子(オーナー)
平良三郎(県人会会長)
古波蔵ハナ(祖母)指南役
青柳和彦上村文也運命の人?

我がままで鈍感な暢子

朝ドラで特に重要になるのが、主人公のキャラクター設定です。朝ドラの主人公が持ち合わせていなければならない要素は何でしょうか。それは、次の3つの性格です。

  • 明るさ
  • 前向き
  • 物怖じしない

これらの点については、「ちむどんどん」の暢子、そして「ちゅらさんの」の恵理、両者とも見事にクリアーしています。どんな困難に遭っても、負けずに、明るく立ち向かっていく姿は、朝ドラにふさわしいポジティブな雰囲気を作り出します。

しかし、これだけでは主人公が「薄っぺら」で「能天気」に見えて、視聴者は次第に離れていきます。そこで次に重要なのが、

次の3つの「できる」です。

  • 人を思いやることができる
  • 失敗を素直に反省できる
  • 人に感謝できる

恵理は、表面上は暢子のように猪突猛進です。しかし、人を思いやる心はしっかり持っていました。幼い頃は東京からやってきた家族と知り合い、その長男の死に直面する気持ちに寄り添い、同じように思い悩みました。大人になってからは、家族や周りの人に心配りをする姿を各所に見せていました。

一方、暢子はどうでしょう。彼女は、人のことを思いやるどころか、

いつも自分のやりたいことで頭がいっぱい

それも笑ってしまうぐらい単純で、最初は「おいしいものを食べること」、それが高じて今は「料理人になること」です。さらに失敗しても、真の底から反省する素振りは見せず、代わりに人を非難し、助けてくれる人へ心から感謝することがありません。

他の朝ドラのように、彼女に思いを寄せる男たちが複数存在していますが、そういう男たちの気持ちに対しても、

あきれるぐらい鈍感です。

それは子供以下にも見えます。さらに家族への思いやりさえも、非常に薄っぺら。父・賢三が亡くなった時、ひとり東京へ貰いに行かれる決心をしますが、結局、「家族といっしょにいたい」という小我で取りやめてしまいました。(当然、東京に行くだろうという視聴者の期待を裏切りました)

子供に大甘すぎる母・優子

今回の暢子のように、朝ドラの主人公は往々にして自由奔放で脱線しやすいキャラです。

それを親が時折、厳しくする正すことによって、本人が深く反省し、6か月かけて成長していく。視聴者はそれを見守ることで、主人公への共感度や親近感を高めていきます。

「ちゅらさん」の場合、いつもは応援している母親・勝子が、周りが見えず脱線する娘・恵理を厳しく叱り、娘が極度に落ち込んだ時は暖かく支えます。そのバランスが絶妙です。一方、父・恵文は、恵理に対して大甘ですが、いざというときに身に染みる一言を発します。

「ちむどんどん」では、指南役を担うはずの父・賢三が早々と亡くなって退場します。(時折、回想で登場しますが)暢子を導く役目は、主に母・優子が担うことになりました。しかし、優子はただただ優しいだけで、

子供たちを強く叱ることは皆無です。

暢子の行動に対しても、基本、無条件に賛同しています。これでは暢子が深く反省し、成長し、感謝するという、朝ドラの“黄金のパターン”をつくりだすことができません。

東京での指南役は、レストランのオーナーの大城が担いますが、冷徹さだけが目立って嫌な感じです。

根が腐っている兄・賢秀

今回の朝ドラで暢子以上に足を引っ張ているのが、兄・賢秀です。お調子者で利己主義の権化みたいな人物です。まず問題なのが、

決して改心しないことです。

ドラマでは必ず登場する「性悪人物」。しかし、そんなキャラでも見るものを引き付け、感動を与えることができます。そのためには、間違いを悔い改め、成長する必要があります。それが主人公の身内ならなおさらです。しかし、

賢秀は変わる素振りを一切見せません。

「ちゅらさん」でも、表向きは同じような人物がいました。恵理の兄・恵尚です。いつも「商売で一発当てよう」と考え、大金を安易につぎ込み大失敗。そして、家族の前から姿を消すところまで、賢秀とそっくりです。しかし、

賢秀と恵尚には大きな違いがあります。

恵尚には、失敗した際の家族に示す深い反省に加え、純粋な愛情が感じられるのです。そして、視聴者は憎み切れず、「仕様がないな~」と許してしまうのです。

ところが賢秀は、家族の寛容さにいつまでも甘え、裏切り続ける。(いつも金を盗む)さらに悪いことに暴力的です。一旦はボクシングで活路を見出すかに思わせましたが、実はそれほど強いことはなかった。

つまり、中途半端なチンピラです。

これは、視聴者に愛されるどころか、ウザがられ、画面に姿を現すだけで視聴者に嫌悪感を与える存在になっています。

この点、恵尚はまるで逆で、「口は達者だがケンカは弱い」というお粗末なところが、愛されるキャラになっていました。

もちろん、賢秀は主人公の兄ですから、朝ドラらしく最後は大逆点の「良い人」に転換するのでしょうが、遅きに失した感は免れないでしょう。

ユーモアがない比嘉家

朝ドラに大切なのは底抜けの明るさです。主人公のまわりで、時には失笑するようなギャグを堂々と連発することが必要です。ところが、「ちむどんどん」の比嘉家では、

そんな明るさがありません。

「ちゅらさん」の場合、古波蔵家はいつも笑いにあふれていました。しっかり者の女性陣が、ダメダメの男性陣にツッコミを入れる。このコントのようなシーンが常態化しており、ドラマの明るさに貢献していました。

特に恵理の祖母・おばぁが家族の愚かさを教訓を込めてからかうところが、一味違った笑いを呼んでいました。

ところが「ちむどんどん」の家族には、そういうほのぼのとした空気がありません。賢秀のコミカルさは反感を買い、その他の家族メンバーも基本まじめで、

家族でふざけ合う場面がありません。

その代わり、深刻な問題だけが次々と浮上して、みんなで落ち込んだり、涙する場面が多すぎます。

病弱すぎる妹・歌子

そんな「ちむどんどん」ですが、視聴者の共感を呼んでいる存在が、暢子の姉・良子と妹・歌子です。

二人とも家族思い。いつも家族のことを大切に思っていますが、同時に自分の夢も叶いたいという立ち位置。視聴者にとって

親近感がわく対象です。

特に注目したいのが歌子です。良子が地元の教師と結婚し、出産するのに対し、歌子は「歌手になる」という大きな夢を抱いているので、

視聴者の興味が注がれます。

「ちゅらさん」においても恵理の弟・啓達がそんな存在でした。根暗な少年だった彼が、周りのサポートを受けながら、最後はプロのミュージッシャンとして成功を収めます。ドラマのサブストーリーとして、視聴者をわくわくさせました。

しかし、歌子の病気が重すぎます

歌子は病の原因を探るために上京しました。これが歌手への大きな転機となるかと思いきや、結局病名は分からず仕舞い。自殺をほのめかすまでに落ち込み、沖縄に帰ってしまいました。

物語全体のテーマの欠如

ここまでキャラクターを中心に、「ちむどんどん」の欠点を指摘してきました。次は、ドラマ全体の根本的な問題を指摘したいと思います。それは、

大きなテーマがないことです。

それでも、何となくテーマはあります。「苦しくても前向きに生きる」。でもそれは暢子の性格のように、個人的で薄っぺらで、

あまり心に響きません。

その点、「ちゅらさん」はどうだったか。このドラマには、在り来たりですが、誰でも賛同できる大テーマがありました。それは、

「命の大切さを忘れない」

恵理は子供のころ、間もなく死んでいく少年・文也と出会います。自分の死を受け入れ、そして自分の分まで家族に幸せに生きてほしい。その姿に恵理は衝撃を受け、弟・和也と結ばれることで、文也の思いに応えようとします。

運命的な出会いと別れ、そして再会を軸にして、恵理の悪戦苦闘が描かれます。そして行き着いたのが、「看護師」という職業と文也と作った家族でした。

最後は、亡くなった文也(亡霊)の呼びかけで自分の殻から抜け出した息子・文也(同名)に、恵理が命を救われるというオチまで付いていました。

頼みの綱は、三角関係の発動

「ちむどんどん」NHKオンデマンド / Amazon Prime Video

「ちむどんどん」は、既にキャラクターの設定は固められ、放送回数も半分を過ぎようとしています。これから作品としてのレベルを上げるのは至難の業です。それでも、唯一盛り上げる方法があるとしたら、それは、

主人公の三角関係です。

どんなにつまらないドラマでも、主人公を中心とした三角関係をうまく利用すれば、視聴者の興味を引くことは難しいことではありません。

「ちむどんどん」でもその下準備はできているので、後はうまく発動し、騒動を起こせばいいだけです。

まず昔から暢子を密かに好いている長馴染みの砂川智がいます。そして、少女時代に知り合った東京人の青柳和彦がいます。さらに、歌子は子供のころから砂川にあこがれ、青柳には同僚で恋人の大野愛がいます。

つまり、三重の三角関係が仕組んであります。

暢子がこの構図の中で、視聴者の共感させられるような思いやりあふれる振る舞いができるかどうか。「ちむどんどん」挽回は、そこにかかっています。失敗すれば、このドラマの評判は決定的になるでしょう。■

「ちゅらさん」NHKオンデマンドより