2023年大河ドラマ【どうする家康】はどうなる?~期待と心配される事は

2023年大河ドラマ【どうする家康】はどうなる?~期待と心配される事は

2023年の大河ドラマは62作目となる「どうする家康」。言わずと知れた三大英傑の一人、徳川家康の生涯を描く物語です。戦国時代を舞台とする大河ドラマは、「麒麟がくる」以来3年ぶり。また家康を主人公に位置付けるのは、

第21作の「家康」から実に41年ぶり、2度目になります。

その他、いろいろ興味が尽きない「どうする家康」ですが、今回は「どうなる『どうする家康』」と題して、「こうなったらいいな~」という期待と共に、心配されるポイントについて考えてみたいと思います。

どうする家康 前編 (NHK大河ドラマガイド) ムック

40年ぶりの主人公・家康

本題に入る前に、2001年以降の大河ドラマを振り返っておきます。23作品のうち、戦国時代が舞台になったのは10作品。およそ半分近くを占めています。

放送年タイトル舞台主人公平均視聴率
2001年北条時宗鎌倉時代北条時宗18.5
02年利家とまつ戦国時代前田利家・まつ22.1
03年武蔵MUSASHI戦国・江戸宮本武蔵16.7
04年新選組!幕末近藤勇17.4
05年義経平安・鎌倉源義経19.5
06年功名が辻戦国時代山内一豊・千代20.9
07年風林火山戦国時代山本勘助18.7
08年篤姫幕末天璋院(篤姫)24.5
09年天地人戦国時代直江兼続21.2
10年竜馬伝幕末坂本竜馬18.7
11年戦国時代江(徳川秀忠側室)17.7
12年平清盛平安・鎌倉平清盛12.0
13年八重の桜幕末・明治新島八重14.6
14年軍師官兵衛戦国時代黒田官兵衛15.8
15年花燃ゆ幕末杉文(松陰妹)12.0
16年真田丸戦国時代真田信繁(幸村)16.6
17年おんな城主・景虎戦国時代井伊直虎12.8
18年西郷どん幕末西郷隆盛12.7
19年いだてん明治~昭和金栗四三・田畑政治8.2
20年麒麟がくる戦国時代明智光秀14.4
21年青天を衝け幕末~明治渋沢栄一14.1
22年鎌倉殿の13人鎌倉時代北条義時12.6*
23年どうする家康戦国時代徳川家康
*『鎌倉殿の13人」は、第46話までのデータ

しかし、知名度と人気を誇る戦国武将である織田信長豊臣秀吉徳川家康武田信玄、そして上杉謙信を主人公とする大河ドマラは、なんと1996年の「秀吉」以来18年ぶり。近年、歴史の脇役にスポットライトを当ててきたのに、どうして今回は超有名人を主人公にしたのか。そこには、NHK側の並々ならぬ意気込みがあるように思えます。

「今回の大河は、絶対外せない」

つまり、主役の松本潤さんに「恥を欠かせてはいけない」という至上命令みたいなものがあるように感じるのです。

そういった意気込みは、キャストのメンバーにもにじみ出ています。主な配役を見ていきましょう。

主役級の男優陣が続々登場

多くの俳優が登場する大河ドラマ。特に舞台が戦国時代となれば、その多くが男優となりますが、

今回の男優の配役には、相当の力が入っています。

家康の兄貴分的な存在であり、ライバルとも言える重要な武将、織田信長を演じるのは、

岡田准一さん。

ジャニーズ所属の俳優の中でトップレベルの演技力と存在感がある俳優です。大河ドラマでは「軍師官兵衛」(2014)で主人公の黒田官兵衛を見事に演じきり、実力派の俳優の仲間入りを果たしました。同じ事務所の松本さんにとって、見本になる心強い兄貴分となるでしょう。

信長と同じく、物語が進むほど重要になってくる豊臣秀吉。この役を演じるのはムロツヨシさんです。コミカルでトリッキーな“芸風”を持っている彼の存在は、ドラマのカンフル剤的な役割を担うでしょう。生き死にの描く場面が多くなるな中、貴重な笑いをもたらしてくれるはずです。

そして、物語前半で家康に大きな影響をもたらす武将・今川義元を演じるのは、

野村萬斎さん。

日本が誇る狂言の名優。映画やドラマでも卓越した演技をいつも披露してくれます。戦国武将の中でも特に「京の佇まい」を持つ義元をどう演ずるか、今から本当に楽しみです。

そして戦国時代の大物、武田信玄には過去に大河ドラマ出演が多数ある、

阿部寛さんです。

恰幅のいい信玄からすると、スマートな阿部さんは少しイメージが違うのが気になりますが、そこは阿部さんです。あのドスの利いた声量で、凄みある信玄像を作り上げてくれることでしょう。

その他にも、里見浩太朗さん(登譽上人役)、山田孝之さん(服部半蔵役)、松山ケンイチさん(本田正信役)、松重豊さん(石川数正役)、藤岡弘,さん(織田信秀役)、寺島進さん(水野信元役)、イッセー尾形さん(鳥居忠吉役)、中村勘九郎さん(茶屋四郎次郎役)などなど、これでもかという程、名優がぞくぞく登場します。

少数精鋭の女性陣

大勢の男優がぞろぞろ出てくる戦国ドラマ。おのずと女性の役は少ないのですが、だからこそ輝く必要があります。

ドラマの前半、松本さんの“相手役”となる家康の正室・瀬名(築山殿)は、

有村架純さんです。

有村さんが視聴者にインパクトを与えたのは、朝ドラ「あまちゃん」(2013)の天野春子役でした。そして国民的俳優となったのは、同じ朝ドラの「ひよっこ」(2017)。そして、今回、満を持して大河ドラマでの登場となりました。彼女の今後にとって大きなステップになるのか、注目されます。

ドラマの中では、家康が瀬名を信長の命で処刑することになります。今回は二人は恋仲だったという設定のようですから、このエピソードがどう描かれるかが気になります。

家康の母親・於大の方の役には、松嶋菜々子さん。最近、数年前まであまりNHKのドラマで見かけないと思っていたら、朝ドラ「なつぞら」(2019)に出演し、続いて2002年の「利家とまつ」以来の大河登場。物語の最初は竹千代(家康の幼名)の時代で、松本さんが不在になりそうなので、松島さんは重要な役どころになりそうです。

家康の母・於大の方(出典:Wikipedia)

極めつけは信長の妹、お市の方を演じる、

北川景子さんです。

気性の激しい兄と多々ぶつかることになる姫役は、北川さんにとって敵役ともいえる役柄。史実上ではほとんど接点がない家康とどのような関係になるのか。面白い脚色を期待したいところです。

この他、広瀬アリスさん(於愛の方役)、真矢ミキさん(巴役)などが出演します。

タイトルに込められたテーマとは?

今回のタイトル「どうする家康」ですが、今までの大河にはなかった問い掛け調になっています。さらに、最終的に天下を取った大物武将に対して、ありえない「どうする」という上から目線。

何か違和感を感じざるをえませんが、まさにここに制作サイドの今回の大河ドラマに対する意図が感じられます。そのヒントは、公式ページに書かれたコピーにありました。

ひとりの弱き少年が、乱世を終わらせた奇跡と希望の物語

「どうする家康」NHK公式サイトより

幼い時から19歳まで、尾張の織田氏と駿河の今川氏の人質という虐げられた立場に置かれた家康。母親・於大の方とは早くに別れ、父親・松平広忠は隣国に絶えず脅かされる三河の領主。将来が見えない中で、

「自分の運命は、どうなるのか?」

と思い悩む若き家康が、随所で見られるドラマになると予想されます。

脚本を担当する古沢良太さんは、家康を「普通の人間の感性、価値観を持った人間が天下統一を成し遂げる」人物と設定したと話し、絶えず岐路に立ち続ける主人公として描くようです。

そんな家康を敬い、そして守ろうとする三河の家臣たちは、何度も問いかけます。「殿は、どうされたいのですか」と。

物語の進めば、天下布武に突き進む信長の後を追っていく家康。しかし、時は群雄割拠の時代。ひとつひとの決断が、自分の“お家”はおろか、天下の成り行きに大きく影響します。さらに信長亡き後、策士・豊臣秀吉との心理戦で、裏の取り合いがますます激しくなります。

「三大英傑」織田信長、徳川家康、豊臣秀吉

つまり家康の人生は、人質の時代から大阪城・夏の陣で豊臣氏を打ち破るまで、「どうする」の連続になるのです。そんな責任ある選択を迫られる家康の姿を見て、視聴者もこう考えることになりそうです。

「自分が家康だったら、どうするだろう」

期待の一方、心配な点も

2022年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」は、非常に質の高いドラマでした。しかし、脚本がコミカルな作風で知られる三谷幸喜さんだったため、過去の「新選組!」(2004) や「真田丸」(2016) のように、終盤が悲劇的な展開になっても、どこかに明るい雰囲気を残すのでは、と期待されました。

しかし、北条氏が犯した所業が、あまりにも残虐だったためか、いつもの三谷色も鳴りを潜め、回を追うごとに重い雰囲気だけ際立つドラマになってしまいました。(それでも最終回では、三谷調が戻っていましたが)

大河ドラマは日曜夜の放送。多くの視聴者は、明朝から仕事に戻らなければなりません。前夜を重苦しい気持ちで過ごすのは辛いものです。そういった意味で、今回の大河には、

絶えずどこかで、突き抜ける明るさが欲しい。

その点、徳川家康の生涯は、途中に悲劇や苦境はありますが、最後は天下泰平を成し遂げるという“ハッピーエンド”になります。松本さんのどこかソフトな雰囲気に、視聴者は最後まで明るい希望を見出せるのではないでしょうか。

どうする?多くの“戦い”のシーン

一方で懸念されることがあります。それは徳川家康という75歳まで生きた武将の生涯をどこまで描けるか、という問題です。

徳川家康 ( 孟齋芳虎画「三河英勇傳」より 出典:Wikipedia)

特に今回は、幼年期~少年期の描写が重視されるとのこと。そのあとで、さまざまな出来事、そして幾多の戦を経験することになります。家康が関係した大きな戦(いくさ)だけでも、これだけあります。

  • 桶狭間の戦い
  • 姉川の戦い
  • 三方ヶ原の戦い
  • 長篠の戦い
  • 武田氏討伐
  • 小牧・長久手の戦い
  • 小田原攻め
  • 朝鮮出兵
  • 関ヶ原の戦い
  • 大坂冬の陣
  • 大坂夏の陣

大河ドラマのファンならずとも、これらの戦のことはよく知っているはず。しかし、放送回数は48回ですから、これらをくまなく丁寧に描く余裕はありません。

どの戦を描き、どの戦を飛ばすのか。

これも非常に難しい。もしかしたら関ヶ原の戦いをもって終了、という場合もありえるでしょうか。「あの戦を楽しみにしていたのに、ナレーションで片付けられてガッカリ」というツイートが多数上がるケースも出てきそうです。

どう撮影する?戦の戦闘シーン

また近年、撮影やCG技術の発展で映画のアクションシーンの迫力がパワーアップ。大河ドラマと言えども、アクションを見る視聴者の目も厳しくなっています。

戦のシーンを、屋外セットを使ってどこまでリアルに表現できるかが勝負です。東京・渋谷のスタジオ内で、少人数でこじんまりと済ますことが続けば、視聴者の期待を大きく裏切ることになります。

一方で関ヶ原の戦いなど大規模な戦は、多くのエキストラや馬を使ってロケーションを行うことを余儀なくされ、経費も大きく膨らみます。制作陣が、どうバランスをとっていくか注目されます。

関ケ原の戦い(関ヶ原合戦図屏風 出典:Wikipedia)

一方で、近年は悪天候が顕著になっています。「鎌倉殿の13人」では、頼朝が亡くなる直前の見せ場になった「富士の裾野の巻狩り」のシーンが、雨天で撮影が延期されただけでなく、風雨でセットが破壊され、無事撮り終えるか危なかったと伝えられます。

そこで今回は、天候の影響を避けるために、制作側はLEDディスプレイに映し出した背景を使って、シーンを撮影する方法を導入するそうです。最新の技術を駆使して、どんな壮大なシーンを見せてくれるか、期待しましょう。

どうなる?視聴率

最後に気になるのは、平均視聴率がどの程度になるのかだと思います。予想するのはなかなか難しいのですが、少なくとも「鎌倉殿の13人」から約2ポイント増の、

14%ぐらいでしょうか。

嵐の松本潤さんの主役で、演じるのが徳川家康なのだから15%以上はいくのでは、と思われる方がいるかもしれません。しかし、数年前に始まったネット配信サービス「NHK+」に加え、「NHKオンデマンド」での視聴がますます増えるという事情も考慮する必要があります。

放送が半ばに差し掛かったところで、実際はどうなっているかを、再びこのブログで検証する予定ですので、ご期待ください。■

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