映画【ショーシャンクの空に】は実話か?~気になる秘話・うら話

映画【ショーシャンクの空に】は実話か?~気になる秘話・うら話

数多い映画の中で必見リストに名前があがるのが「ショーシャンクの空に」です。アメリカで最も信頼がおける映画のデータサイト「IMDB(インターネット・ムービー・データベース」では、ファンの評価で見事ベスト1に選ばれています。

どうして何百億円というような興行成績をあげてきた「アベンジャーズ」、「アバター」「スターウォーズ」、そして「タイタニック」ではなく、

どうして暗い刑務所生活を描いた「ショーシャンクの空に」が人気を集めているのでしょうか?

今回はその理由と共に、作品の裏話、そして気になる「これって実話なの?」という疑問の答えについてご紹介したいと思います。

その前に、「ショーシャンクの空に」の基本データを簡単におさらいしておきます。

  • 公開(北米) 1994年
  • 監督・脚本 フランク・ダラボン
  • 原作 スティーブン・キング
  • 出演 ティム・ロビンズ、モーガン・フリーマン
  • 製作費 2500万ドル(約26億円)
  • 興行成績 2800万ドル(約30億円)
  • アカデミー賞 7部門ノミネートで受賞なし

映画「ショーシャンクの空に」は実話か?

映画のラストシーンの上に長いエンドロールが流れると、あなたの頭の中に浮かぶ疑問があります。それは・・・

この映画、実話をもとにしているのか、否か?

(注)ここからはネタバレがあります。

物語のあらすじは、「妻殺しの冤罪で刑務所に収監された銀行員が、囚人たちとの親交を深めながら刑務所暮らしを耐え忍び、最後に脱獄を果たす」、というものです。

アメリカの情報を調べてみると、どうやらこの映画の元ネタとして推測される実際の事件が2つあるようです。それらを簡単にご紹介します。

サム・シェパード事件

1954年にオハイオ州で起きたきた整骨医の妻が殺害された事件。容疑者とされたは、

夫のサム・シェパード医師

その罪により終身刑を言い渡されました。しかしその後、彼は自身の証言を覆して、冤罪であると訴えたのです。1966年に再審となり、無罪となりました。

このケースについては、サムのほかにシェバード宅で働いていた清掃人が容疑者として名前があがりました。ところが、この男は別の女性殺人で収監されており、その間に亡くなってしまったのです。

同じ刑務所から脱走した囚人

オハイオ州生まれのフランク・フレッシュウォーターは、1957年に起こした交通事故により過失致死傷の罪に問われ、保護観察の身になりました。しかし、規則違反を犯し、再び刑の宣告を受けて収監される羽目に。その場所が、

撮影で使われた刑務所だったのです。

彼は看守たちと仲良くなると、刑務所が所有する牧場に移されました。

そこで、みごと脱獄に成功。

その後、彼は逃亡先のフロリダで長い間、自由な生活を送っていました。しかし、捜査により58年後に再逮捕。再び裁判にかけられ、20年の刑が言い渡されました。

これら2つのケースは、映画のストーリーと必ずしも合致しているとは言えません。また、原作のスティーブン・キングも、「もとにしている事件や人物はいない」と否定しています。が、2つのケースとも、同じオハイオ州で起きた事件であり、執筆中のキングが耳にしていた可能性はあります。

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どういう経緯で誕生したのか?

「ショーシャンクの空に」は、そもそもどういった経緯で誕生したのか。それは監督と原作者との信頼関係に負うところが大きいと言えます。

大作家の粋な計らいとは?

原作のスティーブン・キングは、現代のアメリカを代表する小説家のひとりです。そんな彼は、映画監督の卵たちに、粋な計らいをしていました。

自分の短編の映像権を、たった1ドルで若手監督に提供していたのです。

このチャンスを得たダラボン監督は、短編「A Woman in the Room」を映画化。それを見たキングは、その出来に大変気に入ったそうです。そこでダラボン監督は、Different Seasonsに収録された4作品のひとつ「リタ・ヘイワースとショーシャンクの贖罪」を脚色し、キングに映画化権保持の権利*を求めました。

*オプションとも言われ、定められた期間の間、他人に映画化権を譲渡しない契約

これまた脚本の出来に感心したキング。ダラボンはまだ無名の映画監督でしたが、その才能を信頼し、

たった1000ドルで契約したのです。

ベストセラー作家の小説としては、破格の金額です。ダラボン監督は契約金を小切手で支払いましたが、キングはこれを現金化はしませんでした。代わりに映画が成功したあと、小切手を額に入れて返したそうです。その時に添えたメッセージが洒落ています。

「保釈金が必要になったときの備えにしてくれ」。

監督はダラボン氏ではなかったかも?

キングから信頼を得て劇場映画デビューの道が見えてきたダラボン監督。しかし、別の監督に作品を奪われ、別の俳優が主役になっていた可能性もあったのです。

「ショーシャンクの空に」の制作会社は、キャッスル・ロック・エンターテイメント。この会社の創始者は、アメリカの映画史にも名を遺すロブ・ライナー監督キング原作の「スタンド・バイ・ミー」の監督でも有名です。この会社の名前自体、この映画で出ていくる炭鉱の町の名前にちなんだと言われています。

「ショーシャンクの空に」の脚本が気に入ったライナー監督は、自分で監督することを望みました。そこで、監督のポジションを譲ってもらうため“譲渡金”をダラボン監督にオファー。脚本料という名目で提示されたのが、

なんと240万ドル(約2億5千万円)。

しかし、事の顛末はご存じの通り。ダラボン監督は、この大金をけって自分の夢の実現を選んだのです。

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主役候補にあのハリウッドスターが

ショーシャンクの空の主演を演じるのは、当時あまり知られていなかったティム・ロビンズ。しかし、撮影準備の段階では、

大スターである“2人のトム”が主役候補だったのです。

そのひとりが、トム・ハンクス。当時、注目されていた若手俳優の一人でしたが、同時に出演依頼を受けていた「フォレスト・ガンプ/一期一会」(1994)を選択しました。(彼は同作品でアカデミー賞の主演男優賞を受賞)。

ハンクスは「ショーシャンクの空へ」を評価したのでしょうか。ダラボン監督の次の作品になる「グリーン・マイル」(1999)では、主役を引き受けています。

そしてもう一人がトム・クルーズです。すでに「レインマン」(1988)、「7月4日に生まれて」(1989)で実績を上げていました。もし、クルーズが主演を務めていたら、興行成績は実際の数倍になっていたでしょう。しかし、トム・クルーズの出演はありませんでした。なぜか?

そこにはもう一人の主役が絡んでいたのです。

それは、刑務所でアンディの親友となるレッド役のモーガン・フリーマンです。原作で白人だったレッド役を黒人に変えてまで抜擢された名優。テレビの対談番組で、「相手役の候補リストから迷わず選んだのが、ティム・ロビンズだった」と語っています。

撮影の裏では、こんなことがあった。

取り壊し寸前だった刑務所

映画のもう一人(ひとつ)のが、舞台となった刑務所です。スタッフは物語にマッチする刑務所を見つけるために、全米のフイルムコミッションに問い合わせたようです。その結果、候補に挙がった2つのチョイスのうち、実際使われたのが、

元オハイオ州更生施設の建物

Provided by The Creative Commons Attribution-Share Alike 4.0 International

地図:Google Map ⇒100 Reformatory Road, Mansfield

建物は1896年から使われていた施設で、1990年に閉鎖になりました。その3年後に映画の撮影が始まったのですが、実はその年に壊されることになっていたのです。それを撮影のために、知事が取り壊しの中止命令を出し、生き残りました。

映画の成功を受けて、現在は年に10万人が訪れる観光スポットとして、第二の人生を送っています。

新人監督が拠り所にした名作

撮影は連日、絶えず緊張感がある中で行われました。その大きな原因が、この映画がメジャーでの監督デビュー作になったダラボン監督自身です。妥協を許さないその演出により、撮影は毎日15~18時間に及んだといいます。そんなダラボン監督が一番気になっていたのは、

「物語が映画向きではない」と言われていたからです。

レッドの語りが多いことが、その一番の要因です。そんな彼が心のよりどころにしていたのが、マーチン・スコッセージ監督の「グッドフェローズ」(1990)です。同じようにナレーションを巧みに使った名作。ダラボン監督は、撮影期間の間、日曜日になるとこの映画を何度も見て、刺激を得ていたといいます。

動物保護で撮影に遅れ

アメリカの映画製作では、画面に登場する動物の扱いに対して、過剰なまでの注意や配慮がされる傾向があります。「ショーシャンクの空に」の撮影現場では、

究極の動物保護”が行われました。

アンディーの囚人仲間のブルックスが、うじ虫を自分が飼っている小鳥に食べさせるシーンがあります。動物保護団体の担当者が見守る中、撮影が行われたました。スタッフが心配したのは、ブルックスのポケットに入っている小鳥でした。「狭いポケットの中で、小鳥が息苦しくないか」。

しかし、動物保護の精神はその上をいっていました。「うじ虫が生きたまま小鳥に食べられるのが残酷だ」というのです。その指摘に従うことになった撮影スタッフは、うじ虫が動かなくなる(つまり息絶える)まで待ってから、カメラを回すことになったのです。

思わぬ親子共演

映画で名演を見せるフリーマン。そんな彼でもできないことがあります。それは、

若返ることです。

映画の中で、彼が若い頃、逮捕された直後の写真が登場します。今ならうまくCGで作ることもできませんが、ダラボン監督の採用した方法は「なるほど、そういう手があったね」いう案。それは、フリーマンの息子を起用することでした。

実は息子の出演は写真だけではありませんでした。観客に聞こえるセリフのある役もこなしました。アンディが初めて刑務所に入ってくるシーン。囚人たちがヤジを飛ばします。

「新しい魚(獲物)が入ったぞ」。

この声の持ち主こそ、フリーマンの息子、アルフォンソ・フリーマンです。彼はその後、俳優として活動しています。

生き残ったエンディング

「ショーシャンクの空に」の感動的なシーンは、なんといっても刑務所を出所したレッドがアンディーとメキシコの海岸で再会する場面です。映画の全編が刑務所の中という暗いムードであるだけに、爽快な海辺のシーンは気分を一気に晴らしてくれます。

しかし、最初のエンディングは違っていました。

ダラボン監督が当初考えていた物語の終わりは、レッドがアンディに会うためバスに乗るところだったのです。そのため、レッドが無事にアンディに会ったどうか、誰にも分らないというエンディングでした。

これに反対したのが、プロデューサーのリズ・グロッツァーでした。

テスト試写の結果を踏まえて、彼女は「最後に二人を合わせるべきだ」と主張したのです。ダラボン監督は作品が安っぽくなると反対。しかし、もともと長すぎた映画が短縮されたにもかかわらず、彼女の意見通り再会のシーンは残ったわけです。

ラストシーンの舞台 メキシコ・シワタネホの海岸 photo by Rolando Salvador coello

散々だった劇場公開

前述しましたが、「ショーシャンクの空に」の劇場公開のスタートは散々な結果でした。

その要因のひとつがタイトル」でした。

原作のタイトルは「リタ・ヘイワースとショーシャンクの贖罪」。(リタ・ヘイワースは、囚人が見る映画の主演女優で、アンディーが独房の壁に開けた穴を隠すために使ったポスターの女性)このままだと

リタ・ヘイワースが主役かと誤解される。

そこで、「リタ・ヘイワース」を削ることに。しかし、残っされた「ショーシャンクの贖罪」も意味が良くわからないタイトルです。「ショーシャンク」も覚えにくい名称で、出演者たちも知人に教えるときに苦労したそうです。

さらに「刑務所の話」ということで、周りの人からも映画に対しては良い印象は持たれなかったようです。

そして公開初日。ダラボン監督ら主要スタッフは、ハリウッド映画の習わしに従って、上映館巡りに出かけました。その一つは、ハリウッドで超有名な映画館「シネラマドーム」だったのですが、入ってみると

700席の客席にはひとりもいません。

仕方なく映画館の外にいた二人の女性を捕まえ、頼んで館内に入ってもらったそうです。その時の条件が、「面白くなかったら、チケット代は払い戻す」というものだったのです。こんな具合ですから、映画は公開スタートから躓き、早々と劇場から姿を消しました。

それでも一旦見たら、その良さが分かる映画。「ショーシャンクの空に」は、その年、アカデミー賞で作品賞、主演男優賞を含めて7部門でノミネートされました。しかし、不幸にも「フォーレストガンプ」と同じ年の公開であったこともあり、何一つ受賞することはありませんでした。

なぜ、この映画は心に響くのか?

そんな「ショーシャンクの空に」は、徐々に人気を集めていきます。その兆候は、レンタルビデオで爆発的な成績として現れます

1995年のレンタル作品の中で、トップとなったのです。

またテレビではこれまで100回以上、放送されたといいます。いまはアマゾンなどのオンデマンドで手軽にみられるので、視聴回数はさらに増えているはずです。

なぜ、この映画は多くの人々の支持を得ているのでしょうか。

その答えは、「希望を持つことの大切さ」をテーマにしているからです。

自分に非がないのに苦しむ者(アンディ)。そして自分が犯した過ちのため苦しむ者(レッド)。観客はどちらかに感情移入して、希望の可能性を見出すことができるのです。

映画の中では理不尽なことが、一般の社会のようにいろいろ起きますが、主人公たちは最大限抵抗し、そして

最後に自由(希望)を勝ち取るからです。

2019年に開かれた映画公開25周年のイベントで、見事映画史に残る映画監督になったダラボン氏は次のように述べました。

It felt like a perfect metaphor for every hardship I ever endured“(この映画は、私が遭遇したすべての困難の完璧な比喩のように思えます)

映像は日進月歩で迫力が増していますが、それを売りにする映画は超ド迫力のジェットコースターのようなもです。そうしたアトラクションが毎年登場するなか、「ショーシャンクの空に」の希少価値はますます高まるのではないでしょうか。■

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