【人工知能】は人間を超えるのか?~疑問の核心を2分で知る
数年前からニュースで頻繁に聞くようになった「人工知能=AI」という言葉。その進化の様子が伝えられるたびに、不安を抱く人も多いと思います。
「人工知能は人間の仕事を奪うのか」
「 人工知能は人間を超えるのか」
「 人工知能は人間に危害を加えるのか」
それでも「人工知能のことは、なにか難しくて分からない」と、これらの疑問を先送りしていませんか。そんなあなたのために、たった2分程度で人工知能の大事なことが分かるように説明したいと思います。
人工知能っていったい何?
まず、 人工知能とはいったい何でしょうか 。
実はその定義は、はっきり決まっていません。
専門家の間でも、人工知能の説明は様々です。(出典:人工知能学会誌)
- 「人工的につくられた知能を持つ実体」(札幌市立大学学長 中島秀之)
- 「『知能を持つメカ』ないしは『心を持つメカ』である」(東京大学名誉教授 西田豊明)
- 「究極的には人間と区別がつかない人工的な知能のこと」(公立はこだて大学 松原仁)
- 「人工的につくられた人間のような知能、ないしはそれをつくる技術」(東京大学准教授 松尾豊)
1956年にアメリカで開かれた専門家の会議で「人工知能=artificial intelligence」と初めて呼ばれた技術は、時代の風潮や研究する科学者によって様々な解釈がされてきて、いまもそれが続いています。
また、「何が人工知能か?」という質問に対しても、
はっきり「これこそが、人工知能です」と言えないのです。
なぜなら、「いったん実用化が進むと、その時点で人工知能と呼ばなくなる」という傾向もあるからです。
例えば、今ではごく普通の家庭に普及している「お掃除ロボット」。その仕組みは、取り付けられたセンサーが部屋の状況を把握して、隈なく動き回り掃除を行うというものです。
しかし、部屋の情報を収集して、自動で効果的な動きを行う、という人間のような作業をしているわけですから、ある意味「人工知能」であると言えます。しかし、今では「お掃除ロボットは人工知能です」という人はあまりいません。
つまり、研究段階では「人工知能」と呼ばれているものが一旦機械やモノに組み込まれて同化すると、一つの機能になってしまうことがあるわけです。
人工知能はどこまで進化したのか?
1950年代から本格的に開発が始まり、これまで2度の氷河期を経験した人工知能。今のブームが始まったのが2012年ごろですが、「ディープラーニング(深層学習)」という人工知能の一つの手法によって、飛躍的に進化を続けています。
「ディープラーニング」は人間の神経組織を模したプログラムを多重層にしたもので、多量のデータから特徴を表す数値を自ら見出すことができます。
「ディープラーニング」によって、特に進歩が見られるのは「画像認識」の分野です。ある有名になったプログラムでは、1000万枚の画像を読み込ませた後、ネコの写真を入力すると、それを概念として「ネコである」という認識ができるようになったといいます。
いまでは人工知能と言えば「ディープラーニング」を活用するのが当たり前で、様々な分野で応用が進んでいます。その典型的な例が、クルマの自動運転です。
クルマに取り付けられたカメラやセンサーの情報は、ディープラーニングによって解析され、クルマを取り巻く環境がタイムリーに認識されます。前を走る車、信号や標識、そして横断歩道を渡る人々など。ドライバーが普段行っている確認作業を、人工知能を組み込んだシステムがほぼ代行できるようになっているのです。(自動運転の詳しい情報は下の記事をご覧ください)
その他、ディープラーニングは、「音声認識」などから「新薬開発」、そして「農業」などにいたるまで、ありとあらゆる分野で活用されています。つまり、人工知能が一つの先端技術として常用化されているのが現状です。
人工知能は人間の仕事を奪う?
人工知能の発達に伴い、一般社会からは不安も広がっています。その代表的なのが、
「人工知能は人間の仕事を奪うのか」という問題です。
残念ながら人工知能の活用が進めば人の仕事は奪われますし、既にそれは急速なスピードで始まっています。なぜなら、現代の企業や組織は、「作業の効率化」や「人手不足の解消」のために、人工知能の技術を積極的に導入しようとしているからです。
特に世界に比べて生産効率が悪いと言われている日本。その解決策の一つとして先進のテクノロジーを導入することは至極自然な流れです。
しかし、この流れがさらに強まれば、いままで人がやっていた作業、そして仕事を人工知能が次々に奪うことになります。
「奪われる仕事」として考えられのは、「単純作業」・「データ関係」・「応接業」などです。オックスフォード大学の研究員のレポートにおると、例えば次のような仕事が奪われると予想されています。(出典:The future of employment by Carl Benedikt Frey and Michael A. Osborne)
電話セールス | タクシー運転手 | 裁縫職人 |
レジ係 | 不動産ブローカー | クレジットカード審査員 |
会計士 | 店員 | 経理担当 |
医療事務員 | データ入力者 | モデル |
保険契約審査員 | 営業員 | 銀行窓口員 |
ローン審査員 | 保険営業員 | トラック運転手 |
こういう報告を耳にすると、私たちは人工知能に恐れを抱くかもしれません。しかし、新しい技術に仕事を奪われることは過去もあったのです。
例えば1700年代後半、第一次産業革命が起きて機械化が急速に進んだ時も、人々の仕事が奪われると心配されました。実際無くなる仕事もありましたが、逆に新しい仕事も生まれたのです。
人工知能は人間を超える?
特にSF好きの人にとって気になることは、「人工知能は人間を超えるのか」という命題です。そして「超えるとしたらいつ頃のなのか」ということですが、遠い未来なら考えられるはずですが、当分は超えられないというのが専門家の感触のようです。
この議論をする場合、よく聞く言葉があります。それは、
シンギュラリティ(技術的特異点)
世界的権威のレイ・カーツワイル氏が唱えた人工知能の未来を予測した言葉です。2045年にシンギュラリティに到達する、つまり人工知能が人間の脳を超えると予測したのです。
しかし、日夜研究に没頭している研究者であればあるほど、カーツワイル氏が考えるような人工知能があと25年で出現するのは難しいと言っています。
なぜなら、すべての状況に対応する「汎用AI」を作ることが難しいという理由があるようです。現在、進化が進んでいるのは役目が特定された「専門AI」ばかりです。
例えば囲碁の人工知能です。数年前、人間の名人と対戦し、見事に勝ち越しました。しかし、この人工知能は、冷蔵庫にある食材でおいしいレシピを考えることはできないのです。つまり、別の課題には全く機能しないわけです。
どんな問題が降りかかっても適切な判断し、行動を行うことができる人工知能「汎用AI」は、いまだに完成されていません。そういう意味では、「人工知能はまだできていない」と言えるかもしません。
人工知能が人に危害を加える?
このまま人工知能の進化が進んだ場合、人に害を及ぼすことはあるのでしょうか。または、殺人を犯すことはあるのでしょうか。近未来に限ってみれば、その答えはノーでありイエスであると言えます。
宇宙開発事業を展開する民間企業・スペースXの経営者であるイーロン・マスク氏は人工知能について次のように警告しています。
人工知能にはかなり慎重に取り組む必要がある。結果的に悪魔を呼び出していることになるからだ。
他に物理学者のホーキング博士やマイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏も、人工知能の脅威について懸念を表明しました。遠い未来ならば、人工知能の脳をもったロボットまたは実体が誕生すると想像するのは、当然と言えば当然です。
しかし、今の私たちが生きている間には、人工知能が(単独で)人に危害を加えることはないと考えられます。
なぜならば、人工知能も所詮は機械だからです。機械は、何らかの命令や目的を与えられてのみ、その機能を発揮します。人工知能はその多くを自分で行うことができますが、人間がスイッチを入れることが必要なのです。(単独という断りの意味がここにあります)ですから、自ら「人を殺す」という発想すること自体、起きることはないのです。
ところが、結果的に人工知能が人に害を与える可能性は今でもあります。
なぜなら、人間が人工知能に「あらゆる手段を使って、目的を実行せよ」とか、直接的に「あの人間を殺せ」という命令を入力すれば、人工知能は人間を冷酷に殺めることになるでしょう。
このケースをリアルに描いた映画があります。それはSF映画の名作「2001年宇宙の旅」(1968年)です。
映画の中で登場する高性能コンピュータ(いわゆる人工知能)は、秘密裏にミッションを与えらえます。目的地に向かう途中、乗組員によってそれが阻まれる(スイッチを切られる)という予測を計算ではじき出したコンピュータは、乗務員を全員抹殺するという結論に達します。その結果、一人を除き、すべての宇宙飛行士が殺されてしまいました。
もうお分かりのように、これは人工知能であろうと、核兵器であろうと同じです。つまり、人間がどのように命令するかによって、人工知能は人間の役に立つこともあれば、人類を破滅に追いやることも出来るということです。今後も進化を続ける人工知能に対して、私たちは期待を抱くと共に、どう利用していくかを考えることも重要になってくるのではないでしょうか。■
参考資料:総務省 平成30年度版 情報通信白書、「人工知能は人間を超えるか」(KADOKAWA)
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