【なつ】の恋の行方は?~【なつぞら】クライマックスへの準備を開始
NHKの朝ドラ「なつぞら」が後半に突入しましたが、「話を盛り上げよう、盛り上げよう」という制作サイドの意気込みがひしひしと伝わる放送が続いています。そこで、9月のクライマックスに向けて準備段階に入った「なつぞら」のストーリの仕掛け、そして今後の展開について書いてみたいと思います。
まず、ドラマ後半のなつを一言で言うと…
「好敵手だからこそ、好きになる!」
なつは、けんかのように議論しあいながら、徐々に相手に引かれてしまう公算が大です。(映画で言えば、メグライアン主演の「恋人たちの予感」)それでは、さっそく詳しく見ていきましょう。
「千遥の過去」の役割
なつが兄・咲太郎と再会を果たしてから、二人の気がかりとなっていたのが、妹・千遥の消息でした。幼馴染の信哉からの情報で、預けられた親戚の場所を知った二人。期待と不安を胸に訪ねてみますが、結果は最悪。「叔母にいじめられて、幼い頃に家出した」と聞かされました。
そのあと間もなく、千遥が十勝の柴田家に突然、現れます。ここが朝ドラらし展開です。物事を動かし始めると、ご都合主義でも、すぐさまその話を展開させてしまうのです。そのため、第14週は柴田家がある十勝中心の一週間でした。
しかし、なつたちが十勝に到着する前に、 千遥は 柴田家からいなくなってします。その理由が、「養女にしてくれた家から嫁ぐことになり、自分が戦争孤児であったことを知られたくない」というものでした。なつは、千遥との再会を永遠に諦めざるを得なくなったのです。
「今ドラマの大きな場面のひとつ、『なつと千遥の合流』を折り返し地点で見せてしまうのか」と気をもんだ方も多かったでしょう。しかし、結局、両者を急接近させただけに終われせました。やはり制作側は、「おいしい場面」は終盤にキープするつもりのようです。
「千遥のチョイ出し」は、視聴者を期待を膨らませる効果がありました。
それとは別に、千遥について注目したい点があります。それは、「幼い頃は叔母にいじめられていたが、拾ってくれた桶屋の女将は優しい人だった」という千遥の過去の話です。それに安堵した視聴者も多かったのではないでしょうか。
朝ドラはその課せられた使命のため、全体的にポジティブ重視の作風にならざるを得ないことは、前回の記事でも書きました。 千遥を通して当時の戦争孤児の悲しいリアリティを表現し、さらに現在も千遥に不幸が続いているとすると、ドラマ自体が暗い方向へ引っ張られ過ぎてしまいます。
「天陽の結婚」の意味
ドラマの前半、なつとの恋が発展しそうな男子が、散りばめられていました。柴田家の長男・照男、 同級生の雪次郎、 幼馴染の天陽、天陽の兄・陽平、そして東京の幼馴染・信哉などです。ところが、話が進むにつれ彼らは候補から脱落していきました。
- 照夫⇒天陽との戦いに敗れ、その後、砂良と結婚
- 雪次郎⇒なつを演劇部誘う。が、柴田家の長女・夕見子に恋心
- 陽平⇒同じ会社にいるが、登場シーンが極端に少ない
- 信哉⇒帯広へ転勤(東京に戻れば復活も)
- 天陽⇒同郷の娘と結婚
特に天陽の結婚は、なつも天陽に思いを寄せていたせいもあり、視聴者にとっても突然の大事件でした。とにかく、彼らがなつの恋相手として再び浮上する道はゼロと言っていいでしょう。
なぜなら、朝ドラにとって「浮気」や「不倫」などの邪心はご法度なのです。主人公が結婚している男性と密会をしているシーンは、朝ドラでは到底想像はできないでしょう。これは、NHKの朝ドラが抱える宿命ともいえる「限界」なのです。(詳しい解説は、前回の記事に書きましたのでご覧ください)
【なつぞら】はこれ以上、面白くならない?~【朝ドラ】の限界
本格化する「なつの恋」
恋の相手となる男子が次々といなくなる一方で、
なつの恋に対する意識は、高まる予兆を見せています。
それは7月6日放送の1シーンでした。幼い頃ら続いていた天陽への思いに決着を付けた(と言うか付けられた)なつが、泰樹(草刈正雄)に思わず「寂しくて、寂しくてたまんないんだわ」と告白しました。これは、視聴者に向かって「なつの恋が、大きく動き始めます」という告知とも取れるセリフです。
なつの恋の相手となるのは誰でしょうか。それは、唯一残っている男子、東洋動画の演出部に所属している坂場一久(中川大志)です。(前回の記事で彼の出現を期待していましたが、その通りになりました!)
なつと坂場の関係は、まだちょっと互いが意識している程度で、「恋」とは程遠い状態です。しかし、残す放送回からすると、彼が99%でがなつの彼氏、そして結婚相手(朝ドラで主人公の結婚は外せない)になると思われます。
ただ、なつが5人もの男子をスルーした末に選ぶわけですから、二人はより深い結び付きを持たなければ視聴者が納得できません。(特に旧第一候補の天陽を超える人間性や魅力が必要になります)
なつと坂場。二人の関係はどうなる?
物語の展開上もう逃げられない二人の関係。この後、どのように進展していくのでしょうか。そこには、抜き差しならない「紆余曲折」があるでしょうし、必要になるのは…
二人の真剣なライバル関係です。
動画担当として初めて参加した作品「わんぱく牛若丸」で、なつは演出部の坂場と馬の動きについて対立しました。情熱をかけた仕事上の問題で、互いの考えを戦わせる関係、つまりライバルに出会ったわけです。
主人公のライバルの存在は、物語を盛り上げることに加え、対立の過程で主人公に成長する機会に与えることになります。勝負の末に味わうのが、敗北感であろうと挫折であってもです。その上で、両者が互いを認め合い、尊敬するようになれば、「極上の人間関係」を築けるわけです。(これは現実世界でも同じですね)
「もし、この二人が、同年代で異性同士で恋に落ちたらどうなるか」。それまで対立していただけあって、その恋は180度の劇的なものになるのは間違いないと言えます。(映画やドラマで何度となく使わたストーリーです)
ドラマの最後で制作されるのは、坂場の初演出の作品になると思われます。(モデルになった高畑勲監督は初演出「太陽の王子 ホルスの大冒険」で初監督している)
だだ、一人のトリックスターの存在が気になります。その人物とは、これから登場する新人アニメーター・神地航也(染谷将太)です。彼はあの宮崎駿監督をモデルにしているキャラクターなので、なつに相当のインパクトを与えるでしょう。そうなると、坂場と共に三角関係となる可能性も無きにしも非ずと言うことです。■
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