一生に一度は見たい【5本のSF映画】とは?~映画史に残る傑作選

一生に一度は見たい【5本のSF映画】とは?~映画史に残る傑作選

「見る価値のある」おすすめSF 映画をお探しですか? そんなあなたのような映画ファンに向けて、数百はあるというSF映画の中から、選りすぐり5作品をご紹介しましょう。

SF(サイエンス フィクション)映画は、約120年にもわたって聴衆を魅了し、示唆に富むテーマを探求し、その制作時の視覚効果を駆使し、驚くべき未来のビジョンを描いてきました。これまで数多くのSF 映画が公開されてききているので、どの作品を見ればいいのか判断に苦しむのは当然ですね。

そこで、これまで多くの観衆に感銘を与え、その後のSF映画に多大な影響を与えた作品

いわゆるクラッシクとも言える5作品を選びました。

SF映画は、ディストピア社会から壮大なスペース アドベンチャーまで、忘れられない登場人物、考えさせられるテーマ、最先端の特殊効果を備えた特別なジャンルです。あなたがマニアのSFファンであろうと、そこそこの映画ファンであろと、ご紹介する5作品は、あなたの映画経験の礎になること間違いなしです。

今回ご紹介する、人生を終える前に見ておくべき SF作品は以下の通りです。

  • ブレードランナー (1982) 監督=リドリー・スコット
  • マトリックス(1999) 監督=ラリー&アンディ・ウォシャウスキー
  • ターミネーター (1984) 監督=ジェームス・キャメロン
  • エイリアン (1979) 監督=リドリー・スコット
  • 2001年宇宙の旅 (1968) 監督=スタンリー・キューブリック

(尚、解説のあらすじは、全て結末は伏せてあります)

「ブレードランナー」

「ブレードランナー」のアートポスター

あらすじ

「ブレードランナー」は、リドリー・スコット監督による1982年公開の作品です。物語は、気候変動により愚図ついた天気が続く近未来のロサンゼルスで展開します。

遺伝子操作で生み出された人間と見分けがつかない人造人間のレプリカント。そのうち4人が植民地となった星から地球に逃亡し、短い寿命を延ばしてもらうためレプリカントの製造会社に向おうとします。

そのレプリカントを発見する任務を負ったのが、警察官”ブレードランナー”のリック・デッカード。レプリカントに接近・接触するにつれ、彼らに同情していき、遂には自分の正体に疑問を抱くように。

クライマックスは、デッカードと4人組のリーダーとの激闘となります。

なぜ見る価値があるのか?

「ブレードランナー」は、1982 年の公開以来、カルト的な支持を得ている古典的な SF 映画です。未来感を踏まえたストーリー、人間くさいキャラクター、示唆に富むメッセージに加え映像美は、その後のSF映画の決定的な影響を与えた作品です。

特にアーティスティックなCMの演出経験が豊富なスコット監督と美術監督のシド・ミードによるセットなどのデザインは必見です。さらにネオン光を駆使した独特な照明ヴァンゲリスによる音楽も、業界からも称賛を受けました。

ミードが亡くなって1年後の2019年には、東京で彼の展覧会が開かれました。

撮影秘話

最も興味深い舞台裏のエピソードのひとつは、スコット監督がレプリカントをより人間らしくしようとしたことです。単なる機械として描かれていたレプリカントに感情の深みと個性を与えることで、聴衆に共感してもらいたいと考えたのです。

これを達成するために、彼はレプリカントを演じる俳優に、人造人間という設定とは対象的に、キャラクターの感情と動機を表現するように指示しました。さらに彼はレプリカントの人間性を強調するために、顔のクローズアップ情緒的な音楽などを活用したりしています。

影響を与えた映画は

「ブレード ランナー」は SF映画のジャンルに今も影響を与え続けています。多くの映画監督がこの作品からインスピレーションを受け取り、自分の作品に引用しています。

この作品に影響を受けた映画には、「マトリックス」(1999)、「ガタカ」(1997)、「マイノリティ レポート」(2002)、「AI」(2001)などがあります。また続編が、「ブレード ランナー 2049」として2017年に公開されました。

また、「ブレードランナー」はビデオ ゲームにも大きな影響を与えており、「デウスエクス」「フォールアウト」シリーズなどのタイトルは、この作品から発想していると思われます。

「マトリックス」

「マトリックス」のポスター

あらすじ

「マトリックス」は 1999 年に公開された SF アクション映画です。コンピュータープログラマー兼ハッカーの青年・ネオが、自分が信じていた世界が実際にはコンピューターによって作られた仮想現実、”マトリックス”であることを知らされます。

彼はモーフィアストリニティが率いる反マトリックスのグループに加わり、機械の支配から人類を解放しようと奮闘。グループを取り締まるエージェントやその他の強力なエンティティに立ち向かいながら、自分の使命を悟っていきます。

なぜ見る価値があるのか?

「マトリックス」は、現実と人間の本性をユニークかつ示唆に富んだストーリーで、SFファンに高く評価される作品です。

この映画の筋書きは、奇抜なアクションとスリリングな展開に満ちていますが、同時に人生の意味と現実の性質を探求する哲学的テーマが含まれています。また、数々の斬新な特殊効果など印象的な映像体験を提供してくれます。

撮影秘話

「マトリックス」の最も印象深い撮影秘話のひとつは、「バレット タイム」という効果にまつわる話です。これは、この効果は、スローモーションシーンを独自の手法でキャプチャできる画期的なアイディによるもの。

高速写真コンピューター生成画像を組み合わせて、映画の象徴的な”弾丸の時間”のシーケンスを作り上げました。この効果は当時とても斬新でしたが、今ではアクション映画でよく使われる視覚効果の 1 つになりました。

影響を与えた映画

「マトリックス」は、特にビジュアルテーマの点で、他の映画に大きな影響を与えてきました。

「インセプション」(2010)は、レオナルド・ディカプリオ主演の SF サスペンス映画で、人の夢に侵入して秘密を盗もうとする泥棒のチームの物語です。「ミッション:8ミニッツ」(2011)は、ジェイク・ジレンホール主演の SF スリラーで、爆破テロの真相を暴くため兵士が事件の8分前にタイムスリップを繰り返します。

そして「イーグル アイ」(2008)は、シャイア・ラブーフ主演の SF アクション映画で、謎の発信者に操られた 2 人の見知らぬ人をめぐって物語が展開します。

これらの映画はすべて「マトリックス」の影響を強く受けており、現実と仮想テクノロジー存在の意味などの同様のテーマを掲げています。

映画【マトリックス】画期的な1作目の知られざる舞台裏とシンプル解説

「ターミネーター」

「ターミネーター」のポスター

あらすじ

「ターミネーター」は、ジェームズ・キャメロン監督アーノルド・シュワルツェネッガー主演の 1984 年の SF アクション映画です。

”ターミネーター(破壊者)”とはアンドロイドの暗殺鬼。物語は、このモンスターがサラ・コナーという女性を殺すために2029年からやって来るところから始まります。サラが狙われる理由は、スカイネットと呼ばれる人工知能企業に対する抵抗運動のリーダーを生む母であるからです。

ターミネーターから彼女を守るために未来から兵士も現代にやってきます。果たして2人は殺人鬼の執拗な攻撃から生き延びることができるのか。

この作品は興行収入の大成功を収め、それ以来、モンスター対人間を描く現代SF映画の走りになりました。

なぜ見る価値があるのか?

「ターミネーター」は、低予算にも関わらず、アンドロイドを主人公にした現代SF映画を代表する1作品です。しかし、続編の「ターミネーター2」が大ヒットとなったため、幾分、その偉業が知られていません。

まず注目する点は、機械が世界を乗っ取った終末論的な未来がバックストーリーになっていることです。この設定は、今でもSF映画の重要なテーマのひとつとなっています。

しかし、それをあくまで設定として潜ませ、その恐ろしさを過去(観客にとっては現代)に送り込まれた無慈悲な殺人マシンに代行させていることが、ストーリに深みを与えています。

またアクション映画としても卓越しており、畳み掛けるようなシーンの連続は、まるでジェットコースターのような興奮を観客に与えます。これは続編の「ターミネータ2」で見事な発展を遂げます。

撮影秘話

後年、「タイタニック」や「アバター」など、大ヒット映画を連発するキャメロン監督の作品であるため、舞台裏の興味深いエピソードは事欠きません。

まずこの映画の魅力を支えているのが、ターミネーターを演じるシュワルツェネッガーです。機械でありながらどことなく人間的な仕草は、ファンに限らず多くの人の評判になりました。彼は、実は役を演じる前に脚本を読まずに、映画のセリフの多くを即興で作ったと言われます。

また当時はまだCG技術が十分ではなかったため、多くのシーンが人形のコマ撮りミニチュアセットを組み合わせて作られました。また、キャメロン監督は撮影にも精通しており、この作品のカメラワークや映像のリズムは、その後のアクション映画の手本になったと言えます。

影響を与えた映画

この作品は、何作か続編を生みましたが、その他にも多くの映画に影響を与えました。「マトリックス」 の3部作、「ロボコップ」(1987)「アイ、ロボット」(2004)、「トータルリコール」(1990)などがあります。どの作品も、主人公が半人間、半ロボットという姿が、近未来的な雰囲気を与えています。

そのほか、ゲーム業界にも大きな影響も与えました。「Halo」 「コール・オブ・デューティ」などのゲームは、ターミネーターの”見た目映像”に主眼を置いたプレーを売りにしています。

「エイリアン」

「エイリアン」のポスター

あらすじ

「エイリアン」は、リドリー・スコット監督による1979年公開のSFホラー映画。地球に帰還する商用宇宙船ノストロモ号の乗組員が、次々に1匹のモンスターの餌食になっていく物語です。

未知の信号から未知の惑星に調査したあと、宇宙生命体が一人の乗組員に寄生して成長し、凶暴なクリチャーとなって乗組員をひとりひとり襲っていく。そして残されたのは、女性乗務員リプリー。彼女はプロジェクトに隠された秘密を知ることになります。

なぜ見る価値があるのか?

これは近代的なSFのホラー映画の元祖とも言える作品です。画期的な特殊効果サスペンスに満ちた音楽、そしてキャストによる傑出した演技が、生命体”エイリアン”に対する恐怖を駆り立てます。またストーリーは、企業の陰謀が巧みに仕組まれたスリリングなものです。

等身大のエイリアンのパペットなどの効果を使ってリアリズムを生み出し、生き物をより生々しい存在にしています。さらに、この作品の暗く雰囲気のあるセットデザインとサウンドトラックは、緊張感と不安感を醸成するのに見事に貢献しています。

ブレードランナーとは違い、より娯楽的要素が強いスコット監督のもう1つの傑作と言えます。

撮影秘話

最も興味深い舞台裏のエピソードのひとつは、撮影監督のデレク・ヴァンリントが、エイリアンの撮影がうまくいかないことに気付いたときに起こりました。

彼は苦心の末、生命体をあまり見せないことがカギであることに気づきます。さらに「逆ステージング」と呼ばれる手法も生み出しました。これは、エイリアンの動きを逆に撮影し、それを逆に再生することにより、エイリアンの不気味さをより一層深めるという方法です。

またこの作品の魅力を高めたのが、主人公を演じたシガニー・ウィーバーの存在です。実は最初、主人公は男性を想定されていました。ところが、スコット監督は、ウィーバーのオーディションを見て大変気に入り、彼女を主人公に抜擢。ウィーバーは、彼の期待に答える卓越した演技を披露し、ハリウッド映画における女性の新しい表現の形を示すことになりました。

影響を与えた映画

「エイリアン」が影響を与えた映画には、ジョン・カーペンター監督の「ザ・シング 」(1982)、ニール・マーシャル監督の「ディセント 」(2005)、ヴィンチェンツォ・ナタリ監督の「スプライス 」(2009)などがあります。

近年では「ライフ」(2017)があります。「エイリアン」との類似点が多く、宇宙船の乗組員が、非情に凶暴な生命体と対決するという、ほとんど同じ設定で物語が展開します。

これらの映画はすべて、「エイリアン」から発想を得ていると思われ、どれもユニークでスリリングな視聴体験を生み出しています。単にホラー&サスペンスというだけでなく、「エイリアン」へのオマージュともいえる相関性が感じられます。

「2001年宇宙の旅」

「2001年宇宙の旅」のポスター

あらすじ

最後にご紹介するのが、SF映画の古典中の古典といえる「2001年宇宙の旅」です。これは1968 年のスタンリー・キューブリック監督の作品で、同名のアーサー C. クラークの小説に基づいています。

この作品は人類の進化を暗示させる太古から始まり、一気に20世紀の宇宙時代に飛びます。そして物語は、月で発見された石版”モノリス”の謎を求めて木星に向かう宇宙船へ。コンピューターHAL9000との争いの末、生き残った船長が見たものは想像を絶する光景でした。

この作品は、先史時代の類人猿によって空中に投げ出される骨、スローモーションの宇宙船バレエ、サイケデリックな次元のゲートを通るトリッピーな旅など、印象的なビジュアルとシーンで一杯です。

「2001年宇宙の旅」は、全映画の中でも史上最高の映画の 1 つと見なされており、特にSF のジャンルに大きな影響を与えました。人類の進化、テクノロジー、エイリアンなどのテーマに満ちています。

なぜ見る価値があるのか?

「2001年宇宙の旅」は、その示唆に富むテーマアーティスティックなビジュアルで批評家やファンから称賛されてきました。この作品は、人類の進化と宇宙の結びつきについて、人知を超えた可能性を感じさせてくれます。その助けになっているのが、見るものを異空間に誘う映像体験です。

例えば、作曲家リヒャルト・シュトラウスのワルツと宇宙空間を移動する宇宙船のコンビネーションは、唯一無二の調和を生み出し、この作品の象徴的なシーンとして語り継がれています。

しかし、この作品のメッセージを理解することは簡単ではありません。しかし、時を置いて何度か見直せば、その都度、啓示にも似たキューブリックの遺言を受け取ることができるでしょう。

撮影秘話

映画史上、宇宙をリアルを表現した作品であるだけに、数多くの舞台裏話が残っています。

例えば、作品の重要な登場人物であるコンピューターのHAL。キューブリック監督が1966 年に訪問した マサチューセッツ工科大学(MIT)の人工知能研究所で見学したコンピューターシステムが基になりました。高度に発達したコンピュータと人間の冷静かつスリリングな会話は、キューブリックと原作のアーサー・CP・クラークが協力して創作されました。

また特殊効果においても、数々の画期的な偉業を残しました。当時、まだ銀色で派手な宇宙船が登場する映画が多い中、現実に沿った真っ白なボディにシンプルな形状を採用。それらを時に無音状態で見せることによって、宇宙の深い闇を見事に再現させました。

影響を与えた映画

リアルさを追求したSF映画は、何らかの形で「2001年宇宙の旅」の影響を受けていると言っても過言ではありません。この作品の美学やテーマは、多くの映画作家にインスピレーションを与えています。

この作品の子孫とも言える映画には、特集効果に加え、畏敬の念や人間の本質などの哲学的テーマなどの要素が組み込まれています。またコンピューターの HAL に似たコンピューターまたは人工知能のキャラクターが登場しています。

それらの映画には、すでに紹介した「エイリアン」、「ブレードランナー」に加え、「アビス」(1989)、「コンタクト」 (1997)、「インターステラー」、( 2014)、「アド・アストラ」 (2019)があります。■

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