なぜ視聴率が悪いの?~大河ドラマ【いだてん】が抱える本当の弱点

なぜ視聴率が悪いの?~大河ドラマ【いだてん】が抱える本当の弱点

人生アップデート同好会のナリヒロです。今回は2019年の大河ドラマ「いだてん」の低視聴率について、その理由を私なりにサクッと書いてみたいと思います。

脚本家とキャストは申し分なし!

今年の大河ドラマは、来年の東京五輪の“景気付け”の意味合いも込めて企画されたものです。脚本は5年前に放送されたNHKの朝ドラ「あまちゃん」で成功を収めた“クドカン”こと宮藤勘九郎さん。そして主な出演は、歌舞伎界の若手ホープのひとり、中村勘九郎さん、日本が誇る演技派の役所広司さん、そして好感度女優トップの綾瀬はるかさんなど、キャストは申し分ない布陣になっています。(後半は阿部サダヲさんが加わりますね)

10%を割った視聴率

このドラマ、初回こそ15.3%でスタートしましたが、放送されるほどに数字はダウンして、2月6日の第6話には遂に9.8%と、あろうことか10%を割ってしまったのです。これは近年、低視聴率に苦しんだ「平清盛」(12年・主演 松山ケンイチ)や「花燃ゆ」(16年・主演 井上真央)より早い一桁台突入となりました。その後も、9%台で推移し、3月10日にはナント8.7%を記録してしまいました。

巷で語られる低迷の理由とは?

「一流脚本家に一流俳優なのに、どうして今年の大河ドラマは、人気がないのか?」

その理由をめぐってネットを中心に意見が飛び交っていますが、それをまとめると以下の通りです。

  1. 時代が目まぐるしく前後するので、混乱する。
  2. 話の転換が早すぎるため、付いていけない。
  3. もともと現代モノは、大河では難しい 。
  4. 活舌が悪いビートたけしさんの役は、そもそもいらない。

最初の2つについては、脚本の宮藤さんが持ち前の斬新なスタイルを究極に追求しようとしている結果です。二つの時代(戦前と戦後)をセリフやシチュエーションを頼りに、巧みに絡ませて独特の時空間を作り出しています。これは一つの“芸術作品”として見ごたえがありますが、如何せんオーソドックスなドラマを好む大河ファンには、違和感以外、何もでもありません

3つ目の「現代モノは当たらない」というのはは語りつくされた定説。4つ目は、本題と関係ないキャラが、何を言っているか分からないなら、いくら御大・たけしでも当然NGです。

これらの理由、ごもっとも言えるものばかりです。しかし、実はこのドラマの根底には、「人気ドラマに不可欠なものがない!」という決定的な欠如が存在するのです。それは・・・。

根底にある問題とは?

映画やドラマは俳優が演じている“作り話”なのに、人はなぜ感動するのでしょうか?」

この問いにそのカギがあります。この答えは至極単純です。知らぬ間に登場人物に感情移入しているからです。どんなに魅力ある俳優を登場させても、 どんなに豪華なセットを作っても、 登場人物に微塵も共感できなければ、「作り物の世界」に入っていけません。ただ動き合わる役者たちを外から眺めているだけなのです。「いだてん」は、まさにそういうドラマになってしまっているのです。

主人公は役割をはたしているか?

「いだてん」の主人公は、中村勘九郎が演ずる金栗四三です。ただ、初回から一体「何を目指しているのか」、「何に悩んでいるか」がさっぱりわからない。もちろん「オリンピックに出場する」というお話の目標はハッキリしていますが、彼自身が「是が非でも達成したい」と思っているようには見えません。

周りにそそのかされて五輪に出場させられた若者。水をかぶって「ひえ~」と気勢を上げて威勢はいいが、中身は薄っぺらな田舎者。視聴者にとっては非常に感情移入がし難い「変な人」という印象しか持てないのではないでしょうか。

もし、彼が綾瀬はるかさんが演じる春野スヤに本気で惚れていて、彼女を婚約者から奪うためにオリンピックで一旗揚げるという形にするだけでも、まったく違ったドラマになるのはないかと思います。

後半は多少、期待できるかも…

すでにドラマが始まって3か月。このあと急に金栗四三が覚醒し、視聴者から共感される(愛される)キャラになる可能性は、ゼロではないにしてもほぼゼロです。キャラの統一感を維持したい脚本家がそれを許さないでしょうし、そもそも収録は3か月先まで終わっている訳ですからね。

期待できるのは1964年の東京五輪の実現を目指す関係者たちの姿を描く後半です。その主人公、 阿部サダヲさんが演ずる日本水泳連盟会長・田畑政治のキャラ設定が、人間味あふれる頑張り屋の「普通の人」として描かれるならば、視聴率が上昇する力となるでしょう。

とんだハプニングで起死回生?

ちょっと待ってください。この記事を書いている最中にとんだ事件が発生しました。金栗のシューズ(足袋)を作っている重要な脇役の 黒坂辛作を演じていたピエール瀧さんが、3月12日、麻薬取締法違反で逮捕されたのです。先ほども書いたように、収録は3か月先まで終了しているわけですし、制作しているNHKとしても彼の出演する部分をどうするかが大問題になります。代役を立てて再収録することは、時間的にも、予算的にも難しいところですし、彼の役そのものをカットすることも至難の業になると考えられます。

そこで視聴者は思うわけです。「NHKは、どうやってこれを乗り切るんだろう」。もしかしたら、この降ってわいた興味が、しばらくの間、視聴率を押し上げるかもしれません。■

★来年の大河ドラマ「麒麟がくる」の大胆予想は、下記の記事をご覧ください。

【大予想】大河ドラマ、来年は【明智光秀】で挽回なるか?