【できない部下】の育て方~辞めさせないで生かす秘策とは?

【できない部下】の育て方~辞めさせないで生かす秘策とは?

「仕事での一番の悩みは、部下のことではないですか?」

「働き改革」が叫ばれる昨今。パワハラと言われるのを恐れて下手に出れば、部下の仕事のペースは落ち、ちょっとキツく怒ると会社に来なくなる。その挙句、部下に辞められようものなら、この人手不足のご時世、自分の出世の大きなブレーキになりますよね。

「できない部下にどう対応するか」という課題は、上司に課せられる重要な責務です。しかし、あなたが部下だった数十年前のやり方は、今、ほとんど通用しなくなっています。

まずやっていけないことは、「今の若者は…」と一括りにすることです。社会がいろいろな面で多様化しているように、若者も一層多様化しています。当然、部下にもいろいろなタイプいて、それぞれに合った対応が昔以上に求められるのです。

そこで今回は、悩める上司のあなたのために、今どきの部下の扱い方、育て方を、タイプ別に分かり易くご紹介します。

できない部下の育て方は、まず部下のタイプを知ること

「できない部下で困る」とか「部下が扱いづらい」と愚痴を言っているだけでは、職場は改善されません。会社から任された貴重な戦力を、少しでも生かすように考えてみて下さい。

最初のステップは、部下をもっと知ることです。

それでは、まず現在の部下の顔を思い浮かべてください。あなたは、部下のことをどのぐらい分かっていますか。「もう数年一緒に仕事をしているから、自分の部下の能力ぐらい分かっている」と思っているかもしれませんね。ちょっと待ってください。

仕事ができる、できないを知っていることが、部下を本当に分かっているということにはなりません。それは、あくまで表層でしかないのです。能力とは部下の資質の一端を表しているだけで、その実像は別の話になります。

ですから、「できる部下」「できない部下」という判断基準だけで部下に仕事を任せていると、部署の生産性は頭打ちになる可能性があります。

そこで、「仕事ができる・できない」以上に重視したいのは、部下の実像、つまり「人間性」です。そのためには、部下の心の中をのぞく必要があります。

しかし、そのために部下を飲みに連れていくのは、あまり好ましくありません。(あなたの自慢話に終始する可能性もあります)その代わり、どんな方法を取ったらいいか。それは、いまさら感がもありますが、「面談」です。

業務時間内に30分程度ぐらいが適当です。静かな小部屋か会議室にひとりひとり呼んで、一対一で話を聞きます。清潔で折り目を正した雰囲気が、こういう話をするには最適です。

そこで確かめるのは、「部下が何を思って今の仕事をしているのか」。「また仕事以外のこと、例えば自分の生活をどう考えているかです」。つまり、仕事、社会、自分に対して部下がどういう価値観を持って臨んでいるかを探つてください。

とは言っても、突然呼ばれた面談で、部下もありのままに本心を漏らすことは、まずないでしょう。ただ、その話しぶりやしぐさを良く観察してください。そこから、あなたは部下が持っている「価値観」や「人生観」の断片を知ることができると思います。

面談の結果を基に、部下を以下の4つのタイプに分けてください。(今回はあえて単純化しています)

  • 仕事で成功したい
  • 自分の能力を高めたい
  • プライベートを重視したい
  • 将来に不安を抱いている

もちろん、どのタイプに入るか分からない場合もあるでしょう。また、複数あてはまることもあります。その場合は、最も近いと思われるタイプ、または該当する複数のタイプを踏まえて考えてみてください。

<仕事で成功したいタイプ>

この手のタイプの部下は、上司にとって理想的かもしれません。なぜなら「あなたと同種のタイプだからです」。

向上心にあふれ、一日も早く会社の中で出世しようと考えています

仕事を与えれば、全力で遂行しようとします。会社の理論を良く理解しており、上司であるあなたに逆らうことはまずありません。上司であるあなたにとって大切なことは、部下の能力を見抜くこと、そして効率的に育てることです。

ただ、この手のタイプは仕事を自分で抱えることが多く、過信している場合も少なくありません。その結果、些細なミスが表面化するころに大問題になってしまうのです。ですから、部下を信用していたとしても、コミュニケーション不足に陥らないようにしてください。

また、過剰に負荷をかけないように注意してください。

あなたの若い頃と同じように意欲は旺盛でも、それに見合う精神力が足りないのが今の若者です。あまり仕事を任せすぎると、突然ギブアップを突き付けられるかもしれません。そうならないように、細目にコミュニケーションをとり、部下の状態を常に確認してください

<自分の能力を高めたいタイプ>

このタイプの部下の扱いには、特別な注意が必要です。

仕事に意欲を見せていますが、最初のタイプと違う点は、その目的が自分の能力を高めたいという個人に向かっていることです。

この手の部下は、現在の仕事である程度能力・技術を習得した後は、会社自体を辞めて、転職しようと考えています。上司にとっては「やっと育てたのに」と落胆するだけでなく、会社から部下の監督責任を追求されかねません

こういう部下は、会社やあなたに対して特別な情は一切持っていません。そこで、上司のあなたにとって重要になるのが、上司と部下という関係を超えて、ある種の師弟関係を構築することです。

彼(彼女)にとって何かを学べる間は会社にいる意味があるわけですから、あなたが部下にその何かを与えられる存在であり続ければ、部下が転職する危険性は極端に減ることでしょう。

また、絶えず部下が能力を高められるよう、仕事の難易度を徐々に上げる必要もあります。そうすることによっても、部下は会社に留まる意義を見出しつづけるというわけです。

<プライベートを重視したいタイプ>

ゆとり世代が、20代後半から30代になっている昨今。このタイプの部下があなたの部署に多くいると思われます。

このタイプの部下は、プライベートの範囲で幸福を追求している人たちです。何よりも第一に考えているのは、自分の趣味や家族の幸せです。

彼らが仕事を考える時、頭にあるのは出世や競争ではありません。モットーであり重視しているのは、「ワーク・ライフ・バランス」。仕事と生活の調和です。彼らは常に「仕事が過剰になること」を警戒し、時には嫌悪しています。

彼らの“思想”を変えることは不可能です。

いくら彼(彼女)に能力があったとしても、ある一定の量の仕事しか任せられないと考えておく必要があります。突然の残業などは論外です。

ただ、自分に誠実な分、あなたや仕事に対してとても誠実です。また、あなたがそれを尊重し、適度な仕事を避け、公平な評価を与えれば、反発することもないでしょう。

<将来に不安を抱くタイプ>

最後に上げるタイプは、上司としては一番厄介なタイプの部下です。このタイプは、入社間もない場合が多いですが、30代でもいる可能性があります。

このタイプは、基本、自分に自信が持てていません。仕事、そしてプライベートに対しても、前向きに臨めないでいるのです。絶えず他人からのヘルプや助言を受けて、何とかやっている状態です。

しかし、過剰なまでに手を差し伸べるのは止めてください。

逆に大きなプレッシャーを与えることになるからです。上司として出来ることは、彼(彼女)が余裕をもって仕事ができる時間と空間を与えることです。そして、忍耐強く見守ることになります。

もし能力の向上と自信が認められるようになれば、最初に挙げた「仕事で成功したいタイプ」に変身させられるかもしれません。ただ、それに要する時間は人に寄りけり。あなたが、彼(彼女)の上司でいられる内にそうなるかは保証できません。

部下に接する時に大切なこと

ここまでタイプごとに部下の扱い方をご紹介しました。しかし、それぞれの注意点と同時に大切にしたいのが、信頼に根差した人間関係の構築です。

あなたと部下たちの関係は、比較的「ドライ」なのではないでしょうか。セクハラやパワハラを警戒する最近の職場では、部下同士ならいざしらず、上司と部下の関係はどうしても淡泊になりがちです。

もちろん、会社では仕事以外の意思疎通は必要ないと言われれば、その通りです。しかし、仕事の生産性を上げるためには、部署全体のチームとしてのモチベーションは必要です。

そのためには、仕事を超えた「人間関係の構築」は必要です。

もちろん細かく部下の個人的なことに気を配る必要はありません。ただ、それぞれの部下に対して「見守られている」という意識を持ってもらうことです。そうすれば、どのタイプの部下でもあなたに対して信頼を寄せるようになるでしょう。

担当部署の生産性を上げるために

扱いづらい部下へのアプローチの仕方について、タイプに分ける方法をご紹介しました。ただ、残念ながら、この方法だけでは部下を十分生かし、担当部署の生産性を上げるのは難しいでしょう。

さらに求められるのは、部下同士がそれぞれのタイプを尊重することです。あなた一人が、部下のことを分かっているだけでは、部署はうまく連携して機能することはできません。

しかし、あなたが面談で部下から個別に得た情報は、他の部下に安易に共有できるものでもありません。

そこで重要になるのは、あなたの裁量です。どの情報をどの部下と共有できるのか、またはしなければならないのか。万が一、判断を誤れば、あなたに対する部下の信頼は失墜してしまいます。それでも、どうしても生産性の向上が求められるなら、細心の注意のもとに行ってください。

さあ、明日らかあなたの部下を見る目が変わります。会社から与えられた戦力を、あなたにとって貴重な戦力に変えてください。■